石井式『ス−パ−PLG』の研究・・・・・・・・・・・・・P.3


まちだ−あほうどり 石井英夫


3.テクニックその2・・・・・滑空


PLGについては、滑空だけ切離して策を講ずるということができません。


あくまで高度優先です。



滑空は良いが高度はダメという翼型もありますが、PLGには不向きです。

F1Bの場合ですと滑空に良い翼型はすべて上昇にもプラスに働くといい切れますが、そうウマくいかないのがPLGの悩みです。


滑空スピードが4m/秒弱、レイノルズ数1万数千のPLGの空力世界では、滑空の良い翼型は限られています。なかでも一番まちがいのないのが、カンバー4〜5%の薄型わん曲翼、ライトプレーンでおなじみのヤツです。


モケイの空力、臨界レイノルズ数の上と下とで性能が激変する幾多の翼型のなかで、こいつだけは臨界現象に無縁で、ということは大きさで性能が変わらないという空力界の異端児です。

とはいっても、レイノルズ数が小さくなればそのぶん境界層が厚くなってマサツ抵抗だけは増えますが。

紙ヒコーキの滑空性能が意外に良いのもこの翼型のおかげです。

小型ライトプレーンについても同様。

またもっと低レイノルズ数の例では室内機があります。


しかし、高速域でギリギリの低抵抗を狙うPLGでは、カンバー翼は不利になります。

使って使えないことはありませんが、総合性能でみてプラスはありません。

第1に、高度の低下に見合うだけの滑空性能の向上が得られません。

第2にパターン調整がきわめてやりずらくなります。

実は、PLGの滑空性能の向上を狙って、TAMA翼型を含むさまざまなカンバー翼を験してみましたが、満足できる1例にも出会うことができませんでした。


そしてその結果が、さきに述べました、TAMA5300、まことに平凡ながら現在のところ、これが小生の結論です。

アスペクト比の増大により、誘導抵抗を減らして滑空比を向上せよとは教科書の教えるところですから、これもいろいろと験しました。

スパン35センチ、アスペクト比12のダエン翼というのを試作しました。

おまけに超薄型カンバー翼という念の入れようでした。


結果はどうだったか?


たしかに、ナルホドという気配は感じられましたが、感激するほどのことはなく、ただ調整のむずかしさには往生しました。

これは極端な例ですが、PLGでは苦労してアスペクト比を増大させても思ったほどの成果は得られません。

理由は、どんなに薄翼であっても空力的に臨界領域の下限に当り、アスペクト比増大のプラスは寸法効果のマイナスでほぼ相殺されてしまうからだと考えられます。


ということで、適当なアスペクト比は5〜7あたり、まことに常識的ですが、そういう結論になります。

要するに、いろいろ凝ってみてもダメだということ、平凡な形が一番良いということです。



それでは、PLGの場合大型機と小型機では、どのくらい滑空性能の差があるのでしょうか。


大型機の場合は最大がスパン36〜40センチで15グラムくらい、小型機では最小がスパン15センチで3グラムくらいですが、これが意外なほど沈下率の差がないのです。

すなわち大型機でも沈下率毎秒70センチをなかなか切れませんし、小型機でも毎秒1m以上には悪くなりません。


どうやら、PLGサイズの機体では、臨界現象というブラック・ホールにガッポリ呑み込まれているらしく、残念ながらここから救い出す手だてがまだ見つからないのです。



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