「ランチャ−ズ」への投稿はこれがはじめてです。
小生が多年手がけてきたPLG(パチンコ・グライダ−)が、一応の発展段階にたっした(と思われる)ので、まとめて発表したいと思います。
HLG(ハンドランチ・グライダ−)とPLGは、バルサ製の小型グライダ−という点では共通で、兄弟分のようにみえますが、実態はあきらかに別のカテゴリ−で、PLGは発航方式の点でむしろ紙ヒコ−キの兄弟分です。
それでも何となくHLGの競技グル−プの端っこに加えてもらっているのは、ランチャ−ズ当局の”老人福祉政策”のおかげというほかなく、特例に甘えている身としてはこれでなかなか気を使っています。
負けないように、さりとてHLG組に過度の刺激を与えないように。というのも、初期のころはともかく現在の発展段階では、HLGとPLGの性能差は誰の眼にも明らかだからです。
ただ、PLGの弱点はピンポイントの精度に支えられているために極端なほどのお調子もので、パタ−ンをくずしたとなったら見るもムザンな結果になりやすく、もうひとつの持病は悪気流にヨワいことです。
ですからパタ−ンが完調で静気流に近い競技となったら、まず負ける気がしません。
サ−マルハンティングなしで飛ばしているのはそのためです。
いまのところ、PLGでの常連参加は小生くらいですが、今後強力なPLG勢が増えるようだと、PLG側に何らかの性能規制もやむをえないとみています。
小生がPLGを手がけるようになって、ほぼ20年になります。
当初はHLGやF1Bの息ヌキに過ぎなかったものが、1980年代のなかば、武蔵野市の通称グリ−ンパ−クに通うようになって、ガゼン気合いが入るようになりました。
ひところこればかりやっていた時期があります。
通算でまだ100機には達してないと思いますが、それに近い機数は作っているはずです。
PLGは公園向きの種目のようで、そういえばグリーンパークは紙ヒコ−キのメッカとしても有名です。
1986年ごろと思いますが、それまで模索中だったF1Cに似た直線垂直上昇パタ−ンをほゞ完成したので、第一回の訪中団のときに持参して濃霧による競技中断時に飛ばしたところ、先方のエライさんにぜひ教育用にと乞われ、進呈して大変喜ばれた思い出があります。
PLGの高速垂直上昇パタ−ンは、始めて見る人は誰でも驚きますが、石井式PLGでは、このパタ−ンの成否こそすべてです。
1977年、デンマ−クのFF世界大会でみたF1Cパタ−ンの革命コスタ−・パタ−ンにあやかる石井式パタ−ンと呼び、今回発表にあたり”ス−パ−PLG”として他と区分してみました。
さて、模索時代にはエラくむずかしいように思われた垂直上昇パタ−ンですが、このごろではだいたいセオリ−も解ってきて、バカチョン・システムにより、手順をふめば誰でも調整を完了するようになっています。
バカチョン・システムといえば小生はむかし、F1Bのバカチョン調整システム”F1Bの4ステ−ジ調整法”なるものを発表したことがありますが、総じてこの種のものはバカチョンが良く、秘密めかした”秘伝・秘儀”のたぐいであってはならないというのが小生の考え方です。
PLGがわかるためには、まずPLGの特異性がわからないといけません。
特異性とはなにか? 男性的な競技であるHLGやPLGは、実技をこそ重んじ女々しく空力理論などをウンヌンする種目ではないのですが、やはり少しは空力的考察も必要です。
PLGの特異性の第1は、カバ−しなければならないその速度領域のとてつもないひろさです。
超高速のカタパルト発射からヒラヒラ滑空へ、その速度差は10数倍に達するでしょう。
この一事だけでもPLGは相当な空力的異端児で、こんなモケイ・ヒコ−キは他にありません。
特異性の第2は、超高速の垂直上昇とヒラヒラ滑空を両立させる自律安定機構ですが、これについてはあとで述べます。
パタ−ンのためには、”新手”が必要で、PLGの速度変化を有効利用することから石井式パタ−ンは生まれました。
PLGと小生のかかわりは以上のような次第ですが、以下PLGの問題点を整理しながら記したいと思います。
PLGの滞空性能から話をはじめたいと思います。ところがPLGの場合、コトは甚だ簡単で、単に機体の大きさだけで滞空性能が決ってしまいます。
意外に思われるかも知れませんが事実です。デザインその他の細かい技術はほとんど関係ありません。
もちろんパタ−ンは完調としての話ですが、ウカツなことに、このことがわかるためにほとんど20年を要しました。
機体の大きさ(サイズ)と言うより目方(ウエイト)と言った方がより正確なのですが、小生のPLG経験では、サイズ・イコ−ル・ウエイトなので、ここではそのように理解してください。
それでは大きさ、すなわち目方別にPLGの滞空性能のめやすを示します。
クラス | 高度(m) | 滞空(秒) |
15グラム級 | 35 | 50 |
12グラム級 | 40 | 55 |
10グラム級 | 45 | 60 |
8グラム級 | 50 | 65 |
6グラム級 | 60 | 70 |
4グラム級 | 70 | 75 |
3グラム級 | 75 | 80 |
これが、6ミリ巾ゴム,20センチル−プカタパルト一律使用時の性能です。
パチンコ・ゴムは、このあたりが小生の体力からは手頃というか上限で、ヘラクルスのような巨人ですと、また別の話になります。
なお念のためにいいますと、滞空のほうはある程度実測ですが、高度は目視による推定です。
高度については寸法差による錯覚が心配ですが、見当にそれほどの狂いはない筈です。
さて表で見られる通り、PLGの滞空性能については小型機の優位は絶対で、すなわち”小さいことが良いこと”なのです。
小生の経験では、どんなにテクニックを弄しても、この原則を打破ることができませんでした。
では、性能に惚れて小生が小型機・超小型機の愛用者かというと、現実はそうではないのです。
5グラム以下の機体も、たまには作って手持ちにはしていますが、めったには飛ばしません。
敬遠したい理由はいろいろですが、ひとつはあまりに速すぎ、あまりに高すぎるためにしばしば眼のほうが追跡できず、楽しめないということがあります。
さらに、わずか数グラムの機体にいちいちデサマ落下装置を付けるのがおっくうで、小型機・超小型機のたぐいが甚だ短命だと言うこともあります。
小生が好んで愛用するのは、8〜12グラム級の機体です。
このクラスの機体で完全調整により60秒あたりの滞空を狙い、かつ飛行姿勢を楽しむのがPLGのダイゴ味かと考えています。
技術面からみたPLGのもうひとつの楽しみは、12グラム以上の大型機による比較的低高度からの60秒突破の試みですが、これまでのところ成功していません。
まだあきらめていませんが、PLGサイズの機体の滑空性能改善策は、ほとんど絶望的のように感じています。