●先号に,カーボンに占有されつつある競技用自転車のことを書いた.実は,カーボン・フレーム自転車には,光の部分だけではなく影の面もあった.
カーボン・フレームが出始めた頃,あるロード・レースに某大手メーカーが最新のカーボン製マシンを持ち込んだ.自転車競技には落車・転倒が間々あるが,この時も数人が巻き込まれた.その中カーボン車が混じっていて,折れたフレームで数人の選手が怪我をした.
一般的な鋼製フレームは,曲がることはあっても折れることは稀だ.しかしカーボン・フレームは,最終的には割合単簡に折れる.しかも,折れ口が見るからに危なげなギザギザのノコギリ状になる.普通の落車では擦過傷(すり傷)で済むことが多いのだが,この時はかなりの切り傷で盛大に出血した選手がいた(別のレースに出場していた若い選手の母親が,これを見て「今後,自転車レースは禁止!」と叫んだ,なんてヒトコマもあった).
何しろごく初期のマシンは,釣り竿の素材をそのまま自転車に流用したようなモノだった.その後某メーカーは芯材として薄肉のアルミチューブを用い,カーボンを巻きつける製法に切り替えた.(右上へ)
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●日頃付き合いの深いFF屋ならご存知だろうが,カーボンは引っ張りにはめっぽう強いが,圧縮にはてんでだらしがない.しかも,ちょっとしたショックで折れることがある.例えば,長さ10bでF1B機程度の重さしかない(!)鮎の友釣り竿など,ある日突然何の前触れもなくポッキリ折れることがある.ほとんどの場合,クルマのドアに立てかけたりした時のちょっとしたキズが原因で,それに気付かないままいきなりポキンッ!ということらしい.非常に高性能⇒極度にデリケート,なのだ.
●カーボンの出現で,設計思想が根底から変わってしまったのが,レーシングマシンだ.’60年台初頭にコーリン・チャップマンが創造した金属製ツインチューブ・モノコック・ボディ(フレーム)は約30年間競技用車の定番だったのだが,あっという間にカーボンモノコックに取って替わられた.カーボンは,それ以前にもボディ・カウルに使われていたが,最初はカーボンだけだったのがすぐにケブラーとの混成になった.いざという時,薄肉部分が菜切り包丁化?しない為の策だったのだろう.
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