Dr.石井の「FF文化論」連載第2弾!!
  (お待ちかね!「あほうどりの由来」篇“part1”)
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TANUゴムの最新情報(6月)
 今年は出来の良いゴムが出来ずいらいらしていますが、やっとの事で5月に昨年の5月ゴム(後で調べると相当に使えたゴムらしい)を下地にして若干が5月に出来たようですが、世界中からの注文に応じ切れず、ほんの少量が日本に送られてくるようです。この分は今年の世界選の参加者にかろうじて(競技用のみか)回るようです。多くのF1Bフライヤー用のゴムは後しばらく待たないと手に入らない様子です。待て!
炭素繊維の話 ―カーボンは凶器か?―                                     
●先号に,カーボンに占有されつつある競技用自転車のことを書いた.実は,カーボン・フレーム自転車には,光の部分だけではなく影の面もあった.
 カーボン・フレームが出始めた頃,あるロード・レースに某大手メーカーが最新のカーボン製マシンを持ち込んだ.自転車競技には落車・転倒が間々あるが,この時も数人が巻き込まれた.その中カーボン車が混じっていて,折れたフレームで数人の選手が怪我をした.
 一般的な鋼製フレームは,曲がることはあっても折れることは稀だ.しかしカーボン・フレームは,最終的には割合単簡に折れる.しかも,折れ口が見るからに危なげなギザギザのノコギリ状になる.普通の落車では擦過傷(すり傷)で済むことが多いのだが,この時はかなりの切り傷で盛大に出血した選手がいた(別のレースに出場していた若い選手の母親が,これを見て「今後,自転車レースは禁止!」と叫んだ,なんてヒトコマもあった).
 何しろごく初期のマシンは,釣り竿の素材をそのまま自転車に流用したようなモノだった.その後某メーカーは芯材として薄肉のアルミチューブを用い,カーボンを巻きつける製法に切り替えた.
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●日頃付き合いの深いFF屋ならご存知だろうが,カーボンは引っ張りにはめっぽう強いが,圧縮にはてんでだらしがない.しかも,ちょっとしたショックで折れることがある.例えば,長さ10bでF1B機程度の重さしかない(!)鮎の友釣り竿など,ある日突然何の前触れもなくポッキリ折れることがある.ほとんどの場合,クルマのドアに立てかけたりした時のちょっとしたキズが原因で,それに気付かないままいきなりポキンッ!ということらしい.非常に高性能⇒極度にデリケート,なのだ.
●カーボンの出現で,設計思想が根底から変わってしまったのが,レーシングマシンだ.’60年台初頭にコーリン・チャップマンが創造した金属製ツインチューブ・モノコック・ボディ(フレーム)は約30年間競技用車の定番だったのだが,あっという間にカーボンモノコックに取って替わられた.カーボンは,それ以前にもボディ・カウルに使われていたが,最初はカーボンだけだったのがすぐにケブラーとの混成になった.いざという時,薄肉部分が菜切り包丁化?しない為の策だったのだろう.

         
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●十数年前,FISCO(富士スピードウェイ)近くの“TOM’S”(レーシング・ファクトリー)に立ち寄ったら,ちょうど耐久レース用マシンを組み立てている最中だった.デザイナーのO氏いわく,『このサイズのボディを“焼ける”釜は,今の処国内に1〜2箇所しかないんですよ…』とのことだった.FF屋としては,カーボン素材そのものは珍しくはなかったのだが,5×2×1bのカーボン構築物は,それだけで壮観だった.ボディ先端の牽引フックまで厚さ1aもあるカーボン製で,いったいいくらぐらい掛っているのだろう?とつまらぬことを考えた.
●もうひとつ,カーボンの採用で激変したモノに競技用ヨットのハル(艇体)がある.普通の艇は,素材から細かいサイズまでクラス・ルールで規定されているが,アメリカス・カップを闘うIACCクラスは設計の自由度が高く,ほぼ全ての艇がカーボン製だ.面白いのは,このクラスの規定が出来た当時,使用可能なカーボン素材に制限があった事だ.素材を自由にすると,わが“ニッポン・チャレンジ”が非常に有利になってしまう,と(主に)米国筋が主張したという.早い話,日本製素材が一番進歩していたらしい.強い素材は艇体の軽量化が可能で,その余裕を他の部分にまわせるから有利,ということだったようだ.(右上へ)



 初めてIACCクラスで闘われたサンディエゴでのレースで,ちょっとした事件があった.ニッポン艇のブーム(メイン・セールの下辺を支持する梁.超軽量カーボン製)が,スタート直前に折れてしまったのだ.レースは実質的に始まっていて,棄権すれば負けになる.しかし,その状態では走れない!そこでクルー達は,折れたブームのノコギリ状になった部分を自分達のジャケットで包み,伴走艇に回収させた.そのままでは危険と判断したのだ.ブーム無しの帆走で,当然レースには敗れたが,クルーの冷静沈着な判断は後に賞賛を集めたと言う.
●個人的には,それほど危ない経験はないのだが,折れた釣り竿でささやかな怪我をしたことがある.樹脂にしっかり束縛されているCFRPは,中途半端に解放されると危険な側面を見せることがある.現代のFFは,カーボンにどっぷり首まで浸かっている,と言っても過言ではない.特に「普通の人々」との接点になる公園や田んぼでは,心して扱うべき素材だろうと思う.
 一日の練習を終えた後,壊れてしまった機体を焚き火代わりに暖をとる…なんて光景が,FFの“冬の風物詩”(?)だった時代があった.しかし,機体がバルサ+ヒノキから炭素繊維+樹脂になってしまった今は無理.別段,あの時代を懐かしむ気持ちはないのだが…….
                            
(鰻犬)

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