Super HLG 絶対性能60秒をめざして… 「こえてるてなげかっくうひこうきについていろいろ」
                                                      文責:H.Kataoka
Index
● はじめに…
もうひとつ,その前に…
とりあえず本題に入りましょうか…
設計のことなど少し…
木目,比重のこと…(主に主翼材料)
その他の材料のこと…(尾翼,胴体,D/Tetc.…)
何を置いても一番重要なこと…(主翼々型)
高速翼型 及び 超高速翼型について…(黒川君と山崎さんと,そして…)
何故高速翼型か?…(HLGの特殊な事情,そしてF1Cのこと等)
ヘビの足…
調整が決めてとは言うものの,もとの設計が悪くちゃ…(取付角差・重心位置・尾翼容積)
HLGだからと言って,何も全部たいらでなくちゃならないという訳では…(フラップ翼のこと等)
どう投げても確実にカエル機体があれば…(芝地氏のMMT理論のこと)
主役は主翼,然し…(尾翼のことを少々…)
どうしても脇役にされてしまうかわいそうな奴のこと…(垂直尾翼のこと,D/Tのこと)
アナタ,丸いのと四角いの,どっちが好き?…(主・尾翼の平面形)
やっぱり忘れていた…(D/Tのこと)
HLGにもV.I.S.やA/Rが使えれば…(調整のこと)
完全な調整のバックボーン…(胴体…その形状・断面形,etc.)
図面も引いたし,材料も集まったし…(良い材料の生かし方等…)
美しい機体は良く飛ぶ?…(仕上げ・ドレスアップのこと)
勿論,勝つことだけが目的ではないけれど,然し…(資料の収集,作図のこと)
最後に,『Super H.L.G.』とは何ぞや?ということについて…(定義とあとがき,の如きもの)
Good grief…
ふろく…@単簡な用語集  A作図例 "Super ホロアホウドリ Z-15"

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● はじめに                                                 ▲Indexにもどる
・何年か前に,T−HLGの勝田会員が『Uコン技術』誌に,HLG入門という記事をお書きになりました(C−HLG会員諸氏もお読みになっていると思います).我国における競技用HLGの,あの記事はひとつの完結でありました.それまで,いわゆるパーク・プレーンとしてのHLGは,例えば山森氏のバルプレーンシリーズのようなお遊び的なものはありましたが,本格的競技用HLGについて,あそこまで詳しく書かれたのは初めてだったと思われます.今現在T−HLGやC−HLGで(一応)一流と呼ばれている人々の多くは,あの記事によってHLG道楽(?)へヒキズリコマレタのではないでせうか?(実は筆者もそのひとりなのです)
・あの記事に書いてある多くの事柄(例えば,ハイポイントから後方の翼上面を平面に加工するとか,前縁の厚みを0.5mmにするとか…)の多くは,初心者であった我々にとって非常にムズカシかったのです.否,今でも勝田会員程の精度で"FLASH"を作れる人は,そうたくさんは居ないでしょう.然し,とにも角にも"FLASH"や"MINI-MAX"といった古典的な(?)機体で程々の成績を上げられるようになった人達が次に目差したもの,それがいわゆる今現在の勝田流と呼ばれているシステムを超える何かを求めたモノ,すなわち"Super HLG"であります.
・"Super HLG"を語る時,決して忘れることの出来ない人物が居ます…言うまでもなく,それはT−HLGの黒川会員です.彼の,かの有名な"DREAM L-49"の一枚の図面が我々に与えた影響は計り知れないでしょう.やっと"FLASH"や"テキサス・ボ・ウィ-ビル"を何とか飛ばせるようになっていた我々にとって,彼の『主翼前縁の0.2mmの妥協が2秒のタイムとなって現れます』という言葉は,HLGの性能向上に心を傾けていた人達にとって強烈過ぎました.ここに,(T−HLGには若干遅れをとりましたが)C−HLGにとっての"Super HLG"の道が開け,我々はスタートを切ったのであります!


● もうひとつ,その前に…                                         ▲Indexにもどる
・あらかじめお断りして置きますが,この特集は筆者(及びヘリクツ派(失礼)の来海会員)のドクダン&ヘンケンによって書かれております.この特集の為に何人かのメンバーに取材めいた事を行なったのですが,FAI国際級やその他F/F種目を楽しんでいる人々より,HLGフライア-ははるかに感覚的に設計・製作・調整をしている様で,詳しくデータを残しているのは来海会員位しか居ないのです.例えば,自分の機体の尾翼容積を即座に答えられる人がどれ位居るでせうか?!
・ス・テイル・ボリウムだの何だのはカンケーナイ!俺は,只自分の作ったヒコーキが程々に上昇してゆったりと滑空している姿を眺めていればそれで満足なのだ…という人達も居ます.いわゆるムード派と呼ばれる人々であります.これも又,模型飛行機の楽しみ方のひとつの極で,筆者はこの人々を否定するつもりは,毛頭ありません.
 本特集は,それらの人々の為にも多少はお役に立てるのではないかと思います.


● とりあえず本題にはいりませうか…                                   ▲Indexにもどる
・例えば,ウェイク(WAKEFIELD.F1B国際級ゴム動力機)は40gのゴムで上昇し,F1C(国際級ピストン・エンジンによるフリー機)は,2.5ccのエンジンによって200m程も上昇します.ところが,HLGはフライア-の腕力(だけではないが)によって,なんとか20m程,人によっては30m程度上昇します.F1A(ノルディック.国際級グライダー)も人間の力だけで上げますが,可成りヘタクソなフライア-でも50mの曳航索で少なくとも40m位の高度は得られますし,慣れれば47〜48mから50m+地面から腕を一杯に伸ばした高さ(約2m)で離脱する事はさほどムズカシクはありません.機体の調整さえある程度出来上れば,F1Aで50m,F1Bでは80〜100m,F1Cでは(何と)150〜200mは約束された高度と考えて,一応間違えないのです.ところが,HLGでは初心者ではせいぜい10m程度,相当のベテランでも調子が良ければ30m程度(と言われている),同じ人でも体調が悪いとその7〜8割しか上がりません.この点が,HLGと他のF/F種目との最大の相違点です.つまり,性能(つまり,競技では滞空時間です)のうち設計・工作技術の占める割合が他種目に比べて低く,Aという人とってBestな機体が,Bという人にとって全くダメという場合が大いにあり得る訳です.


● 設計のことなど"少し"…                                        ▲Indexにもどる
・例えば,模型工作にある程度経験のある人が,小堀氏の『ノーネイムウェーク』(余りに有名な機体デス!)を作ったとします.それをひと月程かけて調整すれば,多分平均180秒をマークする事は間違いないでせう.又,同じ人が黒川君の『DREAM L-49』を作った場合,それは果して設計者の言うデッドエア65秒という性能を発揮するでせうか?答えは99%NO,で,恐らく40秒程度でせう.(それも機体が良く出来ていて,の話デス)3分飛ぶウェイクより,1分飛ぶHLGの方がムズカシイのですゾ!
・HLGの設計は,ある意味ではとても単簡で,大型機ではリブ組の詳細等色々メンドー臭いのに対し,翼の平面形とハイポイント・ラインを書込めばいいのです.製作もラクチンです.板切れの断面をカンナとサンドペーパーで翼型に削るだけです.スパーもリブも不要です.設計も製作も単簡なHLGが,単簡に1分飛んでくれれば言うことナシ!なのですが,そうは行かない処に問題がある訳デス.


● 木目・比重のこと… (主に主翼材料)」                              ▲Indexにもどる
・一時会員諸氏が血眼になって捜しても中々見付からなかったCカットのソフト・バルサが,最近は割合多く出まわっている様です.(捜し方が上手くなったのかも?)
よく言われるCカットとA,ABカットの優劣は,Cカットが全然見付からなかった時期に数名のメムバーがAカットを用いて実験した結果,実用上はほとんど変わらないという結論が出ました.返ってA,ABカットの方が軽いバルサが多いので,完成重量を調整し易い位です.又,特に狂い易いという事もないようで,現に筆者の製作した機体はAカットを使用したにもかかわらず1年近くを経た現在でも,特に狂いは生じていない様です.只,Aカットは薄く削ると弱くなるので,Cカットの場合より公園の厚みを大きくする必要はあるでしょう.
勿論,入手可能であればCカットを用いた方が良いに決っています.剛性は,Cカットの方が高いので(多分.実験した訳ではありません),比重は2/100位軽いものが使用出来ますし,同じ条件なら狂いが生じにくい筈です(これも多分).
・比重は,人によって様々です.一般的には1:0.1〜0.13位が好んで用いられるようです.一時期,超軽量機が流行し,1:0.07〜0.09といったインドア用とも思える材料で製作していたメムバーが居ましたが,結局実用に成らなかったようです.何しろ,投げ上げの風圧でひ弱な主翼はねじれ,滑空に入れば軽いことこの上なくフワフワと中々おりて来ませんが,ヘマな落ち方をするとクシャクシャ,ほとんど修理不能です.

材料を選ぶ場合,意外と見すごされがちなのが,板の側面の木目です.(図を参照のこと)断面を見れば,A,B,C,カットの別はひと目で分りますし,表面の木目がまっすぐであるか否かは誰でも注意しますが,側面の木目が板に平行かどうかを見る人は余りいないのです.然し,これは非常に重要な事で,いくら軽く美しいCカットの板も,ここが斜めの木目だった場合全く使いものになりません.バルサを選ぶ場合はよく注意しませう!
・あらゆる木材の中で,バルサ程その比重や強度にムラの多いものも無いので,本来ならここで同比重の材料でも剛性やねばりの差等についても検討すべきでしょうが,残念乍らまとまったデータが一切無いのです.この点については,近いうちに来海会員から発表してもらうつもりです.


● その他の材料のこと… (尾翼・胴体・D/Tetc.…)                        ▲Indexにもどる
・尾翼に使用されるのは,1〜2mmのミディアム・バルサですが,その材質は様々で,厚板に比べて1mm,1.5mm厚のCカットは非常に少なく,皆苦労している様です.性能向上の為には,なるべく軽くしたい処ですが,薄いとD/T降下で尾部から接地し易く,非常にこわれ易いので悩む部分です.『DREAM L-49』では2mmの1:0.09のCカットを指定していますが,こんな材料はまず見付からないと考えられます.一般的には1:0.12〜0.16程度が加工し易くこわれにくいようです.只,1:0.12〜0.13の材料を後縁で1/2mm以下に削ってしまうと,ガンピ等で補強してやらないと無理なようで,補強なし場合,あまり薄くしないでおくか,あるいは1:0.15以上の硬い材料を用いた方が良いでせう.
・胴体は,相変わらずヒノキ材がほとんどです.以前の3×20mm("FLASH"等がこのサイズ)が少なくなり3×15又は4×15mmが多くなってきました.中には5mm厚の材料をだ円形断面に削って使用している人も居ます.ヒノキの場合も,柾目のまっすぐに通った軽いものが少ないようです.バルサと同様,根気良く捜すしかないようですが,ヒノキ材は模型店よりは文具店の方が多く置いてあるので,近所のその手の店(他には,日曜大工用品店etc.)をまわって見るのも良いでせう.
・極少数ですが,バルサ胴に挑戦しているメムバーも居ます.バルサ胴はその軽さが最大の長所で,胴体で浮いた分を主翼や特に尾翼の強力にまわせるので大変魅力的ですが,コチコチのハード・バルサを用いても合成・狂いの点でムズカシイようです.筆者は,カーボンファイバーで前記の欠点は一応解決して居りますが,やはりダイブして来たり木や建物に衝突した場合にはヒノキに比べて弱く,特に主翼前縁付根辺がやられます.いずれにせよバルサ胴はカーボンファイバーが絶対条件で,現在の処実用性に乏しいのですが,招来カーボンファイバー(又はそれに代わる何か)が安価に入手出来るようになれは用いる人は増えるだろうと思われます.
・米国等では,グラスロッドを使用した胴体が増えているらしく,雑誌等にもそういう写真が出ています.グラスロッドは,釣り道具店等で割合安価に入手出来ますし,英国では専用のものが売られています(6mmφ→1.5mmφで全長500mmのものが約300円とのことです).グラスファイバーの中空パイプですから剛性・強度・狂いの心配はまず皆無ですし,重量もヒノキとさ程変わらないと思われ,そうした意味では結構なのですが,主翼・D/T等の取付に問題が残ります.良いヒノキが見付からず,又カーボンファイバーも入手出来ない人,トライして見ませんか?(筆者は近いうちに試る予定です)
・デサマライザー(D/T)は,相変わらず勝田タイプ(火ナワチューブが胴体左側,重りは右側)が多く,黒川タイプ(火ナワ・重りともに左側で,重りは機種のカーブに合せて削る)はC・HLGでは来海君位しか使用していません.火ナワチューブ,防火板(?)は,一時多かったコオクの空カン利用はほとんどなくなり,0.3〜0.5mm厚のアルミ板を使用している人が多いようでしす.


● 何を置いても一番重要なこと… (主翼翼型)                           ▲Indexにもどる
・残念ながら,C−HLGには空力の専門家は居りません.為に,一番大切な主翼・尾翼の翼型について理論的な裏付のある説明を会員諸氏の口から聞くことは出来ませんでした.会員のほとんどは,翼型については理論的にどうのこうのと言うより"感じ"で何かをつかんでいる様です.そこで,この一等重要な点を筆者の独断と偏見で進めることになってしまったのですが・・・・・・・・・・
・現在HLGの世界で使用されている翼型を大別すると,高速型と低速型に分かれます.又,高速型の中にもふたつのタイプがあります.では先ず,高速型のふたつのタイプについて考えて見ることにしませう…


● 高速翼型 及び 超高速翼型について… (黒川君と山崎さんとそして…)           ▲Indexにもどる
・ペネトレイティング・グライド…という言葉は,石井氏の『MJ』誌の連載で知ったのですが,御存知ない方の為に以下氏の文章を少し引用します…

Penetrating Glide ペネトレイティング・グライド(速く伸びのある滑空)
従来,滑空調整で金科玉条とされた失速一歩手前を狙う方式ですと,翼型にもよりますが,なるべくガンバって揚力係数の大きいところを使ったにしても,Cl≒1.0位と考えられますから,計算上滑空速度は,V=4.66m(秒)となり,これは事実上,F1A機の低速側の限界と考えられます.これで,沈下率を0.28m(秒)を実現するためには,4.66÷0.28=16.6(滑空比)となりますが,問題はこの方式で16.6を超える滑空比の機体が実現可能かどうかにあります.筆者の答は否定的で,高揚力係数の実現は,ハイカンバー翼型によらざるを得ず,乱流法をフルに活用するにせよ,ハイカンバーと高揚抗比は相互にケンカする関係にあるからです.(ムズカシイですナァ…筆者注)/TAMA翼型の場合は,層流翼型のつねで,揚力係数の比較的低いところで釣り合ってしまいますから(ここがHLG高速翼型のポイント),滑空はどうしても高速型になります.翼型にもよりますが,筆者はだいたいCl≒0.7ぐらいにふんでいます.これで滑空速度を計算しますとV≒5.57m(秒)となり,さきのフワフワ型のV≒4.66m(秒)と比較するとはるかに高速で,一見不利にみえます./ところが滑空の伸びがまるで違います.この方式で沈下率0.28m(秒)を実現することは,5.57÷0.28=19.9(滑空比)となりますが,空力的最良縦横比の大きいTAMA翼型の利点をフルに活用した大アスペクト翼によれば20:1以上の滑空比の達成はそれほど困難とは思えません./(中略)/FFモデラーは体質的に速い滑空に恐怖心をもっています.しかし,速度が沈下率の大敵ではないことは,時速70km/hを超えて,なお毎秒50cmに迫る沈下率を実現している実機ソアラーがよい見本です.TAMA翼型と Penetrating Glide でFFの流れをかえよう.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…という事なのですが,お分りになりましたか?上の引用は,F1Aノルディック・グライダーに関するもので,直接HLGに結びつくものとも言えないのですが,上がってしまえばF1AもHLGもグライドで何とか一秒でも宙に浮いていたい点は同じなので参考にはなります.HLGの約一分間の飛行のうち,上昇に要する2〜3秒以外は全て滑空なのですから.                                     
■図@

・図@の X,Y 機がAからB,B'に滑空するのに要する時間が仮に(仮に,です)一定とすると X 機は Y機より速度が高くなければならない事になります.仮にこの両機の上昇高度が同一だとすると,両機の性能は同一ということになります(仮に,AからB,B'へ要する時間を同じと考えていますから).この2機の性格の違いは,主に主翼々型によって決まります.Xは高速型,Yは低速型という訳です.(ここで揚抗比と滞空性能を数学の問題として持ち出すとややこしくなりますし,又筆者はその方面には完全に無知なので頭が混乱します.ここでは,Xは高速タイプ,Yは低速タイプと極単簡に割切って考えて下さい.両者の違いは,月例会で色々な人の機体の飛びっぷりを眺めていれば,すぐに分ると思います.殊に古矢会員のフラップ翼機と筆者の"Superホロアホウドリ"の滑空を比べて見て下さい.)
・滑空速度を上げる為には,必要な条件がいくつかありますが,・・・・・・・ここでひとつ思い出していただきたいのは,一般的には沈下率と速度とは互いにケンカする関係にあるということで,例の沈下率≒速度÷滑空比(完全な等式でないことに御注意)からすれば,速度の増加は,そのまま沈下率の増加につながるということです.沈下率の増大は,滑空時間の縮小につながる訳です.では何故?…ここでもうひとつ思い出していただきたいのは,これ又例の『レイノルズ数という名の悪魔』です.レイノルズ数は速度が増加するに連れ大きくなります(R=Vl/1.46×10 5).HLGのR数がどの程度かは,速度を実測して見ないと正確には分りませんが,V(速度)5m/s,l(主翼コード)100mm(0.1m)と仮定すると34,000位になります.一般に使用されているHLG翼型のクリティカル・レイノルズ数がどの辺にあるかも,これ又はっきりとは分りませんが,5%と薄く(他にも理由があります)案外と低い辺にあるのではないかと思われます.いずれにせよ,高速化はクリティカル・レイノルズ数から逃げる手段としては有効と言えます.話を元に戻して,滑空速度を上げる為の一方法たる主翼の低抵抗化はそれ自体クリティカル・レイノルズ数を引下げる効果があります.又,レイノルズ数が大きくなる程揚抗比は良くなる訳ですから,一石二鳥と言えるかも知れません.沈下率=速度÷滑空比,という式をもう一度思い出して下さい.確かに滑空比が変化しないで速度のみ大きくなれば,滞空機としての性能は低下します.然し乍ら模型機の中でも殊に低いレイノルズ数で飛ぶFF機では,速度が増加するとその増加率以上に滑空比(揚抗比)が良くなる可能性があるのです.
■図A(2ツの高速翼型のタイプ)                                    ▲Indexにもどる


・図Aを見て下さい.現代HLG界の最も高性能(実績があります,何と言っても!)と思われる2ツの違ったタイプの高速翼型です.では先づ[A]の黒川タイプから…
・[A]を見ると,例えば"FLASH"や"テキサス"といった古典機(!)と一見さ程違わないように思えるでしょう.然し,もう一度これら古典機(?)の図面に示されている翼型と図A[A](又は,"DREAM L-49")を見比べて下さい.両者には,全く違った処が見付かる筈です.…そうです,違いは翼前縁とそこからハイポイントにかけてのラインにあるのです.古いHLGの図面に示されている翼型を見ると,いわゆるクラークYをうすくしたような形が多く,その後ハイポイントから後縁までを直線で結んだ形が現われ今に到っています.前縁からハイポイントに到る線(面)はどの図を見ても大抵ゆるい円弧に近く,その部分についてはほとんど特別な指示はされていません.が然し,翼型の性質・性能を考える時,実はこの部分が最も重要であり,揚力の大部分はここで生まれるのです.(R/C,C/L機のほとんどが前縁プランクを行なうのは強度アップとともにこの部分の翼型を正確に出す為です.又,芝地氏のスーパーF1B"BLUE MAX MkU"は前縁をリブ組ではくバルサのソリッドにしているのも恐らく同じ理由からと思われます.只し,F1Bのようなロング・スパンではHLGと違って翼型を各部分に渡って正確に削り出すには工作技術の裏付けが必要ですが)
・黒川タイプの特徴は,先づ鋭くとがった前縁が翼弦の約0.5〜0.6%持ち上がっている点にあります.(図参照)これは,元々取付角差が極めて少ないHLGの,極端な風圧中心の移動による突込みや頭上げを押える目的があると思われます.HLGが直線上昇する為には,主翼は極わずかですがマイナス姿勢(下向き)である必要があり,下面が前縁までまったいらだと極端な頭下げの力が働く可能性がある訳です.黒川タイプの翼型を考える場合,この前縁のしゃくり上げ(なんと表現すれば良いのか?…筆者達は,とりあえずこう呼んでいます)は非常に重要です.第2の特徴は,前記の様に前縁からハイポイントにかけてのカーブです.言葉で表現するのは一寸ムズカシイのですが,(図A[A]及び手近のSuper HLGの図面を御参照下さい)単簡に言うと…前縁からハイポイントまでの前2/3ないし1/2を直線に極近いゆるやかなカーブとし,残る1/3ないし1/2をなめらかな曲線で結ぶ…となりますか.何故か?と問われても一寸困るのですが.(会員諸氏の中で,どなたかイチオクエン程寄付して下さいませんか?専用の超低速風洞を製作して,実験値を御報告できるのですが)いずれにせよ,このような形にすると気流の剥離が遅れて抵抗が小さくなると思われます.只しその為には,少なくともハイポイントより前の部分は表面を極力平滑に仕上げる必要があります.(タルクをガッチリ塗り込んでピカピカにするか,ガンピ,プライスパン等の薄紙を貼って凸凹をうめてしまうか,あるいはエンジン機用のフィルムを貼る等の手がありますが,要するにこの部分は決して手を抜かないことです)
このタイプの翼型は,模型飛行機用としてひとつの究極とも言うべきもので(一寸ホメスギ?),この翼型によって同一速度の場合滑空比が高い方が沈下率は小さくなる,という我々の夢が実現されます.
・図A[B]は,あのスーパー山崎氏の用いておられる翼型の"想像図"です.というのは,氏の翼型・機体の詳細な図面が発表されていないからで,氏から直接うかがったお話をもとに筆者がテキトウに?作図したのが図A[B]です.
 氏の説明によれば,氏はこの翼型を岩波新書『飛行の原理』(by谷 一郎,岩波新書570)の層流翼に関する文章から思い付いたのだそうです.『飛行の原理』は実機に関する本であり,HLGのような極低レイノルズ数における問題には全くタッチしていないので,そこに記されている原理を模型飛行機に応用するのはどうか…と思うのですけれど,現実にあれだけ飛んでいるのですから(氏は昨年度T-HLGの年間チャンピオンです)文句のつけようがないのです.(ヘリクツ派の来海会員もマッツァオ!…失礼!)
このタイプは,実機の層流翼と同じくハイポイントを40〜45%にまで後退させている点が最大の特徴です.又,前縁はとがらせずにある程度丸みを持たせる方が抵抗が少くなるとおっしゃっていましたが,低レイノルズ数の場合前縁がとがっている方が揚抗比が良くなるという一般に信じられている論の逆を行くものです.ハイポイントまでのカーブをどう処理されているかは聞きもらしてしまいましたが,見た感じでは特に変わったところはなく極ゆるやかな曲線で結ばれているようです.C-HLGで何人かの人がこのタイプの翼型を実験したのですが,余りまとまった結論は出ていないようです.特に滑空はさ程期待出来ないようだとの意見も聞かれました.然し,確実に実績を上げているタイプであり,又ハイポイントが後方にずれた場合従来の翼型よりも空力中心が後方に移動するのではないかという意見もあり,とに角ひと味違った使いこなしが必要なようです.いずれにせよ,古典的翼型に対して抵抗は非常に少なく高速でその本来の性能を発揮する翼型で,山崎機の飛行も又相当のスピードです.


● 何故高速翼型か?… (HLGの特殊な事情,そうしてF1Cのこと等)              ▲Indexにもどる
・以上のように,色々手をかえ品をかえ気まぐれな大気とケンカしたりゴマをすったりしても,従来のいわゆるフンワリ型の滑空に対して,高速翼型は飛躍的に滑空性能が向上したでしょうか?…答えはNo,です.多少良くなったのではないか,という程度で目で見てハッキリ分るような違いは出ては来ません.それでは何故苦労して高速翼型を追い求めるのでせうか?
・答えはふたつあります.ひとつは,これは筆者の(例によって独断と偏見ですが…)思う処なのですが,速い機体は低速機に比べて小さな気流の乱れに巻き込まれにくく,それを突切ってしまう為に乱気流によって高度を失うことが少ないのです.これは逆に言うと小さなサーマルにはつかまりにくく,又上手く乗った場合も外れ易いという事にもなります.翼面荷重の極小さい軽量機が,一寸したサーマルでも見る々々上昇してしまうのに,逆に極弱い下降気流の中では単簡にたたき落とされてしまうのと反対に,高速機は非常に安定して飛びます.このことは,記録の平均化(つまり,MAXか20秒未満か,といったバラツキをなくす)為には有効ですし,サーマル発生の少ない飛行場においても大切な事です.
・もうひとつの答え…実は,本当の答えはこちらの方なのですが…は,HLGにとって滑空性能と同じ位に大切な事柄,つまり高度の獲得です.同じエネルギーを与えられた物体が,より高度を得る為には,より抵抗を少なくするしか方法がありません.(翼面荷重が同一の場合)黒川機や山崎機の,あの到達高度を思い出して下さい.体力の差,練習量の差,などと言って片付けてはいけません.筆者の如き非力な練習不足の男でも,図A[A]の翼型を採用した新作シリーズで従来の20〜30%増しの高度を得られたのです.(バルサ胴を使用したこのシリーズは翼面荷重では従来の機体より軽いのに,より高く上がったのは翼型のお影と言ってさしつかえないと思われます)もう一度図@を見て下さい.X,Y 両機の沈下率を同等とすれば,図中のh(高度)が大きいとすればその方が高性能な訳です.
以上,主翼のみについて考えてきましたが,ひつこく沈下率≒速度÷滑空比という式を思い出して下さい.滑空比は揚抗比なのです.揚抗比の 抗 は,実は翼のみの抗力ではなく機体全体の抗力なのです.(図B参照)
■図B(揚抗比)                                             ▲Indexにもどる

・HLGに最高の性能を発揮させるには,図Bからも分る通り主翼以外の全ての部分の抗力を減少させる事が大切です.御自分の機体をもう一度見直して下さい.D/T部分,主翼と胴体の接合部,尾翼と胴体の接合部,etc.…気になる処はありませんか?揚抗比の 抗 は,来たい全体の 抗 なのです!





● ヘビの足…
                                               ▲Indexにもどる
・前項で書きもらしたF1Cのことを少々….石井氏も『MJ』誌に書いておられるようにF1C機はHLGと非常に似通った処があります.HLGの目標とする直線的な高速上昇とフラットな滑空は,F1Cでも同じです.そう思ってF1Cの資料を眺めていたところ,ありました.米国の D.Rounsaville という人の"Excelsior"という機体がいわゆるHLG翼型を採用していました.ハイポイント33%,翼厚8.3%で,ハイポイントから後縁までは直線で結ばれたHLG翼型です.石井氏,黒川君はF1CにもHLG翼型がピッタリと考えておられ,筆者も参成(賛成)です.今秋までにはHLG翼型(黒川タイプ)のE-2機が飛ぶ筈ですので,そのテスト結果をご期待下さい.


● 調整が決めてとは言うものの,もとの設計が悪くちゃ… (取付角差,重心位置,尾翼容積) ▲Indexにもどる
・ここでもう一度,FF模型の世界でHLGが他種目と違ったムズカシサを持っている点を思い出して見ませう.
機体設計の面で,HLGはF1Cをはじめとするエンジン付の機体と非常に似通った処がある,と前項に書きました.それは確かにその通りなのですが,FF模型道楽を,実機の世界ではそれぞれ専門の分野となっている設計,製作,調整及び飛行技術の3ツのプロセスを一人で消化して行くもの,と考える場合,それ等の各々占める割合はHLGとF1C(及びその他のガス・フリー)では全く違って来るのです.
■図C                                                   ▲Indexにもどる


図Cの表の各々の比重については異論もありましょうが(例えば,F1Bモデラーには調整及び飛行練習に非常に重きを置く一派が存在しますが,彼等の中でも強い人というのはやはり設計センス・工作技術が人並はずれて勝れているようです.凡俗の民は,設計・製作の段階から相当に心をひきしめて掛らねばなりません),こういう具合に考えて見るとHLGはF1CよりもむしろF1Aの方により近いのではないかと思います.つまり,機体と人間の相性といったものが大いに幅を効かす種目という訳で,10人のモデラーに10機の名機が存在し得るのです.従って,当特集もこの調整に関する部分にこそ最も力を入れるべきなのですが…残念乍らここでは多くのモデラーが設計・製作の場合以上に,コトバによって表現し得ないある種の勘の如きものによって事を行なっているらしく,結局中途半端なものにならざるを得ません.とは言うものの,いくら一生懸命調整して見たところで,もとの設計がマットウでなければHLGは飛んでくれませんので,以下に極々基本的な設計理念(?)を述べておきます…
■図D                                                   ▲Indexにもどる

.例えば,ある翼型について,沈下率が最低になる迎角は(翼面荷重一定とすると),普通最大揚抗比(CL/CD)が得られる迎角より少し大きい辺にあります.(図D参照.√CL3/CD2は,沈下率の逆数で,それが最大になる迎角は,揚抗比√CL/CDの最大になる迎角より少し大きくなっている.なお√CLは失速角.)
・取付角差の固定されているFF機の場合,飛行時の迎角はその重心位置および速度により決定されてしまう訳です.速度は主に翼面荷重により決められるので,結局迎角は重心位置によって調整することになります.(筆者私見…芝地氏の例のカマクビモタゲ機が見かけより滑空が良いのは,この辺にヒミツがあるのではないでせうか?)すなわち重心を前方に移動すれば,取付角差を大きくするか尾翼面積を小さくするかしてバランスを取ることになり,迎角は大きくなります(例,芝地機).反対に重心を後方に移動した場合は,取付角差を小さくするか尾翼面積を増すかしてバランスを取ることになり,迎角は小さくなります.只し,これは一般的な重心位置範囲35〜80%の間での話で,重心位置が風圧中心(30〜35%位か?)より前方にある場合は,別の考え方をしなくてはなりませんが,ここでは一般的は重心位置範囲の場合のみを考えます.
・この問題についても又,風洞実験その他が行なわれたことは無いようですし,たとえあったにせよ我々の手許には届いていません.そこで,経験的なデータしか提供出来ないのですが,以前は55〜70%(平均空力翼弦に対して)のものが多かったのに対して,最近は35〜50%と比較的前方に重心を設定している機体が多いようです.中には芝地機のようにほとんど重心と空力中心を一致させている例さえあります.これは例外としても,テイル・ボリウムにもよりますが,重心を40〜45%に置いた場合主尾翼間に極わずか(0.3〜0.6°位?)の取付角差が付くことになり,この角差によって上昇→滑空のカエリの調整が比較的楽にムダが少く行なえるようです.
・従来HLGの基本と言われて来たいわゆるゼロゼロ調整(角差ゼロ)では,カエリの調整がムズカシク,初心者によくあるヒューストン型(ヒューッ!と上がってストン!と落ちる)パターンの多くはこのせいであろうと思われます.又,上空でサーマルから外れた場合等も,ゼロゼロ調整の機体では突込み姿勢からの復元性に乏しく,そのまま地面と激突する場合が多いのに対し,若干の角差が付いていれば何とか頭を持上げてピッチングしながらも滑空姿勢に戻ることが可能です.(実例…昨年10月名古屋で行なわれた三地区合同HLG大会において目撃した例ですが,相澤氏の"テキサス"が上手くサーマルをつかんで高度40メートル程の処を飛んでいたのですが,名古屋のサーマルは我々の知っているものと少々違うらしく細長いタツマキ状をしているようで,関東勢の大型機は外れ易く,相澤機も案の条あっという間にサーマルから叩き出されてしまって80°位の急降下姿勢に入り,回復する間もなく猛スピードで地面とKiss!くだけ散ってしまいました.高度も充分あり,いくらかでも頭を上げればMAXが出たろうと思われます.逆の例…今年4月の例会で,筆者の機体は投げミスにより棒立ち失速,あわやヒューストン!かと思いましたが何とか地上2〜3メートルで持ち直し,そのまま滑空に入って40秒.滑空の伸びは弱いサーマルのおかげと思いますが,角差ゼロの機体ならヒューストン!で終わっていた筈で5〜6秒,その差は大きかったのです)
・ではズバリと言って重心位置は何%位にするのがベストなのでせうか?これは翼型(黒川タイプにするか山崎タイプにするか,又翼厚は何%位にするかetc.…)によっても,機体全体の設計によっても大幅に変化するのですがが,例によって独断と偏見によって強引に答えを出そうとするならば,それは40〜45%位の処に落着くのではないかと思われます.前記のように,この位の重心位置の場合がテイルボリウムにもよりますが,取付角差が上昇パターン(直線的上昇→小さい運動によるカエリ→スムーズな滑空への移行)を完成するのに最適な値になるのではないかと思われるのです.只し,この重心位置(40〜45%)は古典的な機体(例,"FLASH"や"テキサス・ボ・ウィ-ビル")ではテイルボリウムが大き過ぎて適さないようです.最近の高性能機は,重心位置の前進によって尾翼が小さくなっており,これも筆者の私見ですがテイルボリウム0.7〜0.9位が角差等との関係で最適なようです.

※参考までにテイルボリウム(尾翼容積)の求め方を…
Vn=Sh/S・l/t  ただし,Sh…水平尾翼面積 S…主翼面積 l…モーメントアーム t…空力平均翼弦


● HLGだからと言って,何も全部たいらでなくちゃならないという訳では… (フラップ翼のこと等) ▲Indexにもどる
前項まではいわゆる高速翼型について書きましたが,今度は逆に低速型についてです.
・石井英夫氏の『TAMAタイプ翼型の研究』がモデル・ジャーナル誌に連載され始めたのが去年の5月(6月号),御本人から話を聞き現物を見せていただいたのはその数ケ月前でした.その内容は,我々HLG屋にはおなじみの下面フラットのいわゆるHLG翼型を基本にしたバリエイションで,これを見たHLG屋の中にはこのTAMAタイプをHLGに逆輸入出来ないか…と考えた人が居たのです.HLGだからと言って,何も全部が全部平らでなくたって良いじゃないか,時には下面が凹んだHLGがあっても…という訳で,去年秋からフラップ翼HLGなるものが出現し,何と12月例会に優勝してしまいました(機体製作・古矢会員,選手・相澤会員).
・現在までにフラップ翼をテストしたメンバーは,古矢会員を含めて3〜4名程度で,古矢氏を除いてはこれといった成果は上がっていない様です.テストしたのが3〜4名,然も成果を上げたのが古矢氏只ひとりとあっては,結論めいた事を言う訳にも行きませんが,今現在見たり聞いたりした範囲で気の付いた事等書いておきます.
・先づ,フラップ翼機に対して言えることは工作が非常にメンドーであるという点です.例えば,左右のフラップ角がほんの2〜3°(後縁の下がり具合ではミリメートル以下のオーダーです!)違っても,クライドはとも角投げ上げ速度では変なクセが出る恐れがあります.従って,特に主翼の工作精度は普通の翼より余程上げなければなりません.又,翼下面に接着する指掛けの三角材も整形後いったんフラップ折れ曲がり部で切離したり,胴体も主翼取付部をアンダーキャンバーに合せて整形しなくてはなりません.他にも色々ありますが,いずれにせよ従来の機体に比べて工数が数十パーセント増加する事は確かです.
・次に考えなければならないのは,高速翼型の項でも詳述した取付角差の問題です.下面フラット翼の場合,便宜的にフラットな面を基準(0度)と考えて尾翼との取付角差を調整する訳ですが(正確には,前縁と後縁の中心を通る線を0°とすべきであるが,模型にクラークYやHLG翼のような下面フラットの翼型を用いる場合は,工作に都合が良いので下面を基準面として用いる)フラップ翼の場合は本来の翼の基準面を正確に頭に入れておいて,角差を決定しなくてはなりません.
ここで,例えば従来のHLGと同様にフラップ翼の主翼と水平尾翼をほぼ0度に取付けて滑空調整を行なったら,どう成るでせうか?多分,その機体は投げ上げたとたんに下向きに突込んでしまうでせう.黒川タイプ翼型のところで書いたように,速い速度で投げ上げられた時点で主翼は極わずかにマイナス姿勢になるので,エビのように身体を折曲げた形のフラップ翼は片刃のナイフ同様一方へ向き始めると止まらない,という性質が強調され易いのです.(石井氏の受け売り.筆者もF1B機において経験済み.)従って,フラップ翼型を使いこなす為にはいかなる場合も決して主翼をマイナス姿勢(下向き)にしない為の万全の対策を立てておく必要があります.
その為の方法としては,重心を前方に置くようにして(40%以上前へ)取付角差を大きく取ったり,芝地氏のMMT理論(例のカマクビモタゲ…後に詳述します)には,これらの対策が全てなされています.
・これらの対策のなされたHLGは,素晴らしい滑空を見せます.恐らく(これ又,デイタは全くありません)絶対的な沈下率は,一般の高速翼型HLGよりいくらか低いのではないでしょうか.では,いかに取り扱いがやっかいとは言え,素晴らしい滑空のフラップ翼を試みる人が少ないのは何故でしょうか?…これには"何故高速翼型か?"の場合と同様,ふたつの答えがあります.
ふたつの答えは,実は高速翼型の場合と全く逆なのです.つまり,ひとつは乱気流に対する弱さであり,もうひとつの本当の理由は高度の獲得が困難だという点です.特に後者の理由は1メートルでも,10センチメートルでも余計高度が欲しいHLGにとっては決定的で,一応の成果を上げている古矢氏もこの点は認められて居ります.極常識的に考えてもフラップ翼が通常の翼に比べて抵抗が大きい事は明らかです.上昇時には揚抗比はほとんど問題にならず,絶対的抵抗のみが問題です.故にフラップ翼は大いに不利なのです.
・結局,高度が得られない分を滑空の良さでカヴァする形で,フラップ翼は通常翼型と対抗するのですが,設計・製作・調整のムズカシサ等から考えると決定的なメリットは見出せず,むしろマイナス面の方が多いようにも思われるのです.まあ腕に自信のある方は一度おためしあれ…といった処が現状でしょう.


●どう投げても確実にカエル機体があれば… (芝地氏のMMT理論のこと)             ▲Indexにもどる
MMT理論…MMTは,Minimum Moment Theory の略ですから,本当はMM理論と言うべきでしょうか?ともあれ詳しく解説すると長くなるので単簡に説明します…
■図E


・図Eを見て下さい.MMTにはふたつの要素があり,その第一はこの図を見ればすぐに理解出来ます.通常の重心位置を45〜70%に設定した機体は,図のような釣合状態で飛んでいるのですが,当然これは滑空状態に釣合です.図中の各揚力は,L1M1=L2M2の等式でバランスされるのですが,HLGのように強引な加速によって上昇させた場合は,式の左右バランスがくずれ等式ではなくなってしまいます.つまり,尾翼に比べて翼としての効率がはるかに勝れている主翼の揚力,つまりL1が大幅に増大しL1M1>L2M2となり,故に頭上げモーメントが働き棒立ち失速ヒューストン!となる訳です.
■図F
・もうひとつの要素は,図Fによって理解出来ます.機体を前方から見て,重心を境に上下に分けて考えます.主翼には当然上反角が付いていますから,抗力は上半分の方がずっと大きい訳で(主翼は揚力を発生すると同時に,抗力の大部分の発生源でもあります),機体の抗力中心Dは,重心よりずっと上方に在ります.そして,ここにもDM3という頭上げのモーメントが常に働いている訳ですが,これも又重心の前後位置関係とともに滑空時に頂度バランスが取れるよう調整されるのが普通です.抗力Dは速度の2乗で増加しますので,投げ上げの加速によってDM3は極端な頭上げモーメントを発生し,これ又ヒューストンの原因になるのです.
・MMTとは,この前後・上下のふたつの頭上げモーメントを極力小さく押えようという考え方です.すなわち,図Eにおいては重心位置を前進させて極力揚力中心(30〜33%)に近付けることによってM1を減らし,理論的にはM1=0にすればL2はゼロで尾翼は全く揚力を発生する必要がなくなり,只の水平安定板をして働けば良いのです.又,図Fにおいては抗力中心Dを下げることはムズカシイ(上反角を減らすと横安定に問題が起きる)ので,M3を極力ゼロに近付けるために重心を上方に移動させる訳です.芝地氏のカマクビモタゲHLG"THE-MMT"の水平尾翼があんなに小さく,ノーズが上を向いているのは以上のような理由によるのです.又,これらの要素を持つMMT-HLGは芝地氏の機体に見られる通り,今までの機体とは全く違ったカエリを見せ,少なくともパターンの確実性の点では他より明らかに勝っています.
・然し,芝地機"THE-MMT"はカエリの確実性こそ高いものの,絶対性能は35〜40秒程度であろうと思われます.それは,この機体の細部を見れば分ることで,氏は今の処F1Bに命をかけるウェーク屋の星(?)であり,HLGは飽くまでそのテスト及びヒマツブシですので,仕方ありません.氏自身は,このMMT-HLGは体力の衰えた中高年向き(つまり真上に投げるのは一寸おっくうになった人達用)で,30才以下の人は作る資格なしと言っておられる位です(真上に,力一杯投げられる間は通常の機体で高度を稼ぐのが本来のやり方,という意味).只,古矢氏のように(氏は,当然30才以上デスネ)フラップ翼との組合せで用いるのも面白いし,又"MMT-DREAM"等作って見るのも面白いのではないかと思いますが,筆者は30才まで未だ4年近く残っているので…去年29才だった相澤会員,いかがですか?


● 主役は主翼,然し… (尾翼のことを少々…)                           ▲Indexにもどる
・主翼々型やD/Tのメカニズム,あるいは表面仕上げに相当凝る人でも,尾翼とくにその翼型については存外無神経なようです(全部ではありません)し,又単に板の周辺を丸めただけという人も相当多いようです.果して尾翼は適当にキャンバーが付いているか,あるいは板の角を丸めただけで良いのでしょうか?…MMT機ならば,尾翼は単なる水平安定板ですから,抗力を極力少なくする為に対称翼型にでもすれば理想的.只し1.5mm厚ではヘタに加工すれば狂ったりし易いので1mm厚のCカットの周囲を丸めただけで充分でせう.然し,図Eで明らかにされた如く,重心が揚力の中心より少しでも後方にある以上,尾翼はいくらかでも揚力を発生しなければならない,つまり揚力尾翼としての働きを求められるのです.
・揚力尾翼である以上,ある程度のキャンバーを持たせる必要がある訳ですが,前記の様に薄い板(1.5〜2mm)は加工がムズカシイ上に狂いが生じ易く,又尾翼は主翼の後流にドップリ漬かる(?)訳で,計算通りの揚力を発生してくれない事が多いので余計に話がややこしくなります.
かつて発表されたHLGの図面の中で,一等凝った尾翼は(例によって)黒川君の"DREAM"で,材質は2mm厚比重1:0・09Cカット,翼型はTAMA2 6 200改(翼厚2.6%,ハイポイント20%,前縁を0.6%持上げる)を指定しています.一般にはこれ程凝った尾翼は不必要(?)ですし,又こんな軽い材料を正確に削り出すのは普通のヒトには一寸無理です.実際にやって見ると分りますが,ハイポイント20%というのは大変ムズカシイのです!殊にだ円翼の場合は.
そこで尾翼という奴は妥協の産物とも言うべきシロモノに相成る訳で,その妥協点をどの辺に見出すか…ということになります.そこで先づ考えられるのは飛行バランスに必要な揚力(図EのL2)を確保した上で,極力その抵抗を減らすことです.第一の方法としては,面積を小さくすること.L1M1=L2M2ですから,M1を小さくすることによって右のL2もしくはM2を小さく出来るのですし,又M2を大きくすればL2を小さく出来ます.(実機の尾翼は単なる水平安定版なので,その面積は極端に小さく,特に速度向上が絶対条件の戦闘機では抵抗軽減の為ギリギリのサイズで,スケイル・モデラーは非常に苦労させられるのです.)L2が比較的小さくて良いということになれば,当然面積は小さくて済み,又苦労して正確な翼型に削り上げる必要も少なくなる訳です.面積が小さくなれば当然軽くなりますから,テイルが軽くなった分だけノーズも軽くなり,全体の重量を軽減出来ますし,その必要がない場合はそれだけ丈夫な材量を使用出来,実用性がアップします.
                                      ■図G         ▲Indexにもどる
・さて実際に尾翼を製作する場合,その翼断面は図Gのような形が考えられます.[A]は一番望ましい形で,下面にも若干ふくらみを持たせて半対称にすれば言うことなしですが,まづムリでしょう.[B]は時折見かける形でハイポイントより前だけ削り,後方はほとんど板のまま残している形で,[C]の只の板に比べてほんの少しですが抵抗も減りますし,特に軽い材料の場合は[A]のように後縁を薄くすると狂ったり割れたりし易いので実用的と言えます.[B]と[C]で注意したい点は,後縁の角は丸めないできちっと角を出しておくことです(その方が抵抗が少ないのだそうです).筆者としては[A]と[B]の中間位,[A]のように余り後縁を薄くせずに適度の厚み(0.4〜0.6mm)を残して仕上げるのが,ベストではないかと思います.
〔なお揚力尾翼の重心位置計算法等詳しい事は,森照茂先生の『模型飛行機』(先月特集で紹介済み)等をお読み下さい〕


● どうしても脇役にされてしまうかわいそうな奴のこと… (垂直尾翼のこと,D/Tのこと…)    ▲Indexにもどる
・どういう訳か,垂直尾翼は大抵の場合余り話題になりません.無ければ飛行機はとばないのに….
・滑空時に必要とされる垂直尾翼の面積は,実は隋分と小さいのです.最近のF1C(モデルジャーナル誌'78年10月号,97頁の"SPEED CREAM"の2面図を見直して下さい)は,垂直にブチ上げてVIS,A/Rによってカエリを行なうので,滑空に必要なだけの面積があれば良く,故にびっくりする位小さい垂直尾翼しか持っていないのです.然し,F1BやHLGのように上昇時の横安定が非常に要求される機種では,やはりある程度の面積は必要です.
・垂直尾翼面積(本当は垂直尾翼容積で考えるべきですが)は,主に上昇パターンによって決定されるようです.一般に,"FLASH"や山崎機のように1〜2旋回上昇させる場合はいくらか大き目に,いわゆる黒川パターンのようにF1C並の垂直上昇の場合は相当小さく出来ます.
・垂直尾翼は,主翼の上反角と切離して考えられません.この相互関係がくずれると…螺旋不安定又はダッチロールに入ります.大型機では,適正面積を計算によってある程度予測可能ですが,HLGの場合はモノが小さいだけに(例,筆者の場合,F1Bは約1duに対してHLGは0.24du)大変微妙ですので,あらかじめ或るサイズ(フルサイズ機で0.3〜0.4du,小型機で0.2〜0.3du)を与えておいて,望ましい上昇パターンが得られる迄カット アンド トライで進めるのが一番良いのではないでせうか?他にこれと言って良い方法は思い付きません.只,他の人の設計を注意深く見つめることは大切で,特に良く飛んでいる人の飛行パターンと,各翼の面積分布,相互の角度差等は大いに参考にすべきでしょう.(何も垂直尾翼に限りませんが)


● アナタ,丸いのと四角いの,どっちが好き?… (主・尾翼の平面形)               ▲Indexにもどる
・各翼面の平面型(形)は,カザリッ気の全く無いHLGにとって製作者の個性が最も現われ易い処です.とは言うものの,平面形によって機体の性能は随分と左右されます.何故ならば,平面形によって翼の発生する誘導抵抗が大巾に異なるからです.
                                         
■図H
図Hの[A][B][C]の順に誘導抵抗は少なくなります.HLG程度の機体でも,機体全体の抵抗の半分近く(?…恐らくそれ位だと思われます)が誘導抵抗ですから,この差は大きいのです.(念の為に一言…誘導抵抗は,少なくする事は出来てもゼロには出来ません)只,抵抗が少ないと言っても,やたらとテーパー比を強くしたり,だ円翼の先をとがらせたりすると,抵抗が減るどころか逆に失速特性がやたら悪くなるので注意が必要です.製作のムズカシさ(メンドー臭さ)は,[A][B][C]の順番に増すことになるので自らの工作の腕と相談です.製作し易さと,誘導抵抗,そうして失速特性の3ツを考え合わせると,[B]のテーパー翼に若干の前進角を持たせたもの,テーパー比は2:1〜3:1位が最も適していると考えられ,最近の高性能機はこのタイプが多い様です.


● やっぱり忘れていた… (D/Tのこと)                                 ▲Indexにもどる
・材料の項で少し書きましたが,D/Tの形式は左に火ナワ,右にオモリの勝田タイプが多く,両方とも左側にまとめた黒川タイプは未だ少ないようです.HLGは一般的に左旋回ですので出来れば後者の方が望ましいのですが,工作が多少メンドーになるので余り採用されないものの様です.
・さすがに以前よくあったハンダ線を巻付けたり,又釘を針金でしばったりする人は極少くなりました.現在ではほとんど全ての人がD/Tを使用しています.中でも一番最後までD/Tを使用しなかったT-HLG山崎氏のそれは見事なもので,胴体に完全に埋めこまれた重りと火ナワ管,オモリはステンレス製でピカピカです.一寸普通の人には手が出ません(棒ヤスリだけじゃ…).オモリの材質は勿論ほとんどがナマリ(Pb)ですが,これも以前は多かった釣用の板ナマリ(0.2〜0.25mm厚,幅16〜17mm,25〜30gで¥100程度)を巻いたものは減り,2mm厚程度のインゴットが多くなって居ます.ナマリは,空カンを用いれば台所のガスで単簡に溶けるので,このインゴットは誰にでも作れます.板ナマリを巻いたものは,ぶつかると変形し易いので,出来ればインゴットにして用いるべきでしょう.
・さて現在HLGに用いられているD/Tは全てオモリ落下式,あるいは重心移動式というべきものです.効果の確実さという点で,この形式は最高なのですが,欠点もあります.
習慣的にD/Tを使用する方は経験済と思いますが,この形式は尾翼をこわし易いのです.重りを吊す位置にもよりますが,大抵お尻を下げた姿勢で降りて来ますので下が草深ければとも角,土や石ころだともうアウツ!勝田氏も書いておられるように,効きの確実さでは胴体の最後端にオモリを吊下げるのが一番なのですが,前記の理由で最近は水平尾翼前縁の数センチ前方に吊下げる人が多いようです.そうして,絹糸やテグスでは尾翼や主翼に巻きつき易く,殊に後者の場合はD/Tが効かない恐れもあるので中にはピアノ線(0.25〜0.4mm)を用いる人も居ます.
いずれにせよオモリ落下型D/Tで大切なのは,何時いかなる場合もオモリが常に一定の位置に固定されるようになっている事です.オモリを機首にゴムバンドで止める毎に位置がずれていたのでは(例え1mm以下でも),重心調整等無意味です.オモリの位置決め用の枠を作る等して,オモリは常に決まった位置に固定しませう!
・オモリ落下式以外のD/Tとしては,同じ重心移動型でも前方に移動するタイプ(外国の雑誌で見たのですが,火ナワがゴムバンドを切るとスプリングでオモリが5〜6cm前方へ飛出して頭から落ちる.頭から落ちると,こわれにくい.)や,大型機では常識の尾翼ホップアップ式…小型機では効きが悪く,構造も複雑かつ弱くなるので不向き…,スポイラー式…抵抗板式.山崎氏,古矢氏がトライしたが,効きが悪く,これもHLGには不向き…等が考えられます.が,結局オーソドックスな方法に戻らざるを得ないようです.
・確実に効いて,機体をこわすことのないD/T…誰か発明してくれませんか?


● HLGにもV.I.S.やA/Rが使えれば… (調整のこと)                        ▲Indexにもどる
本当に,HLG用の3ファンクションタイマーでも出来て(5〜6グラムで!)V.I.S.やA/Rを作動させることが出来たら,どんなに調整が楽になるでしょう.何しろ,カエリは全く機体任せ,モデラーはとに角力一杯真上にぶん投げてやれば良いのです…もっとも,こうなると,HLGは砲丸投げと同様単に投げ上げパワーの差だけで勝負が付いてしまう,面白からぬ競技になってしまうかもしれませんが.
・V.I.S.もA/Rも使えない現在のHLGモデラーとしては,いかにして投げ上げパワーを無駄なく上昇に結び付け,パワーを完全に使い果たした時点でスムーズに滑空に移行させるかに,日夜苦労している訳です.
カエリ性能向上の為に色々な方法が考えられていますが,中でも注目すべきなのが重心位置のオフセット,及び左右翼面積のオフセットです.最近のように重心が段々前へ移動して来ると,従来のようにスタブティルト(水平尾翼の傾き)で旋回させるのがムズカシクなって来ます(MMT機では,ほとんど効かない).カエリは旋回性と密接な関係があるので,スタブティルト以外の方法を考えなくてはならないのですが,垂直尾翼に方向舵を切ったりするとトンデモナイコトになるので,そこで重心及び左右翼面積をオフセットさせるという事が考えられた訳です.やり方は単簡,左翼の先端下面に板ナマリを少々貼り付けるのです.正確に作られた機体ならば,サイズにもよりますが約0.5〜1.5cuの板ナマリ(0.2〜0.25mm厚)で正しく旋回する筈です.翼面積のオフセットは,勿論設計の段階からそのように考えて進めるべきで,出来上がった機体にナイフを入れるなんて事はすべきではありません(言う迄もなく,左翼より右翼をほんの少し大きくします).
この様に調整された機体の特徴は,その旋回性が速度の大小に余り影響されないという点です.スタブティルトや方向舵によって旋回性を与えられた機体は,速度が大きくなれば当然その性質上旋回も急になりますが,上記の調整のなされた機体は投げ上げ時の高速でも旋回性が助長されないので非常に直線的な上昇パターンが得易く,又カエリも無駄が少くスムーズです.なお垂直尾翼の項で述べたように,上昇パターンが直線に近付くに連れて,その面積は小さくて済みますし,返って大き過ぎては困る場合すら考えられます.
.従来HLGのタテ安定は,重心位置の調整(つまりオモリの増減)で取るのが一般的で,出来上ってしまった機体の取付角差をいじることは少なかったようです.人によっては尾翼にハーッと息を吐いて曲げているようですが,Cカットの板は湿度を与えて曲げてもすぐに戻ってしまうので(狂いにくいからCカットを用いたのでは?),およそ不確かな方法と言わねばなりません.主尾翼の取付角差,前にも述べた通りカエリ性能にとって非常に大切な要素です.そこで,ハーッと息を吐きかける等という不確実な方法でなく,もっと確実に取付角差を調整する方法として…(もとのアイデアは平尾氏,発展させたのは相澤氏及び筆者)…
                                     
■図I
・方法としてはいたって単簡です.図Iのように胴体後端に割りを入れ,そこに適当なクサビ(名刺片,ヒノキ材をうすく削ったものetc.)をはさんで前後させて取付角差を変化させるだけです.只,注意すべきは割りの深さで,胴体の強度が許す範囲でなるべく深く,出来れば水平尾翼付根の半分以上は欲しい処です.
・この方法では,従来の重心移動とこの取付角差を相互に行いながら上昇パターンを決めて行くのですが,以前石井英夫氏が発表された『F1Bの4ステージパターン調整法』に一寸似ている処があります.以下,具体的に説明しますと…
『第一ステージ・滑空』…機体は,あらかじめ適正かと思われるよりほんの少しだけ取付角差を大き目に製作しておきます(尾翼の後端を持ち上げる).そうして,割りを入れてクサビをその中央辺まで押込んでおきます.この状態で,何時ものようにオモリの増減による滑空調整を行います.(勿論旋回性も)
『第二ステージ・投げ上げ』…滑空調整の仕上がった機体を投げて見ます.上手く上昇→カエリ→滑空に入ればOKですが,大抵の場合そうは行かず,頭を上げて宙返りしそうになるか,逆に突込み姿勢に入るでせう.対策として,前者の場合はクサビを前方へ,後者の場合は後方へ,いずれの場合もほんの少し(クサビの形状にもよるが,1〜3mm程度)移動してやります.当然そのままでは滑空のバランスがくずれているので,再び第一ステージに戻ってオモリの増減による調整をくり返します.仕上ったら,又投げ上げて見ます.これを何度がくり返すことによって,その機体にとって最も適した重心位置と取付角差(の妥協点)を発見出来る筈です.完全に調整し終えたら,瞬間接着剤で固定,バルサ片とエポキシで仕上げれば完成です.
この調整法の欠点は『メンドー』なところですが,HLGはF1B等に比べて発航−回収のサイクルが早く(D/Tを使用すれば更に早くなる)石井氏の4ステージに対してこちらは2ステージですので,中々パターンの決まらなかった機体を前に頭をかかえこむよりはずっと早道でしょう.(石井氏のシステムでF1Bを調整するには最低丸一日,普通は2〜3日掛ります)なお,第1,第2の各ステージは全く分けて考えずに第2ステージおいても機体の滑空状態を注意深く見守り,常に最良の姿勢を求めなくてはなりません(地上効果により,手投げでは完全な滑空調整は出来ない場合もある).


● 完璧な調整の為のバックボーン… (胴体…その形状,断面形etc.)              ▲Indexにもどる
いかに他の部分を正確に軽く作った処で,胴体がイーカゲンなものでは機体は無価値なものになってしまいます.主翼と尾翼その他の取付角差や相互の位置関係を保っているのは細い一本のヒノキ棒(又は,バルサ,グラスロッド)に過ぎず,又それは機体重量の相当部分を占めているからです.
                                     
■図J
・図Jが現在までに使われた胴体の形(プロフィル)の主なタイプです.[A]は"FLASH"を代表とする米国でデザインされた機体群が中心だった時代のもので,主に3×20(インチサイズでは20.32×3.175)が使われました.丈夫で狂いにくい代わりに重く,何とかもう少し軽くならんかナァ…とボヤいていた人達が次に用いたのが[B]です.形は余り変わりませんが,高さが減って3×15,又は厚みを増して4×15も多く使われました.[C]は,C‐HLGのメンバーが超々軽料(量)機に凝っていた時代に使われていた形で,胴体後半を細くしぼり更に強度に余裕のある主翼の下の部分をえぐってあります.相手がヒノキなので軽量化には効果的でしたが弱く,殊に主翼のすぐ後方でよく折れました(何しろフルサイズ機が27〜28gでしたから,胴体のみならずあらゆる部分が実によく折れ,割れ,はがれました).現在では[B]がほとんどで,[A]もまだ結構多いようです.
・図Jの[C]のようなのは例外として,胴体で問題になるのは先づ強度(狂いに対する強さを含む)と,形状の変化に対する抵抗の2ツです.
強度,ひと口に言っても,それは投げ上げパワーによって変形しない為の剛性と,何かにぶつかったりした場合にも折れたり曲がったりしない文字通りの強度と,そうして温度,湿度によって狂いが生じにくいという3ツの要素を含んでいます.一般的には,3×15or4×15の,軽くて柾目のヒノキを選んで用いれば,これらの要求には充分なのですが,材料の項にも書いた通り良いヒノキは中々見付かりません(黒川君に言わせると,本当に良い胴材は500本に1本位しか見当たらないそうです!).まあ,見付からないとは言っても,全然無いという訳ではないので,根気良く捜しませう.
さて胴体の厚み及び高さは一体どのサイズがBestかと言うと,筆者の考えでは4×15ではないかと思われます.従来の3×20と4×15は,断面積ではともに0.6cuで,比重が同じならほぼ同重量に仕上ります.投げ上げ時には(写真を見ると良く分りますが)主に横向きの力(右投げでは,後部胴体が左に曲げられる)がかかるので,厚みを増した方が良いと考えられるからです.勿論,タテ方向の強度も重要ですが,ヨコ方向に比べて力のかかる割合が少いので15mmあれば充分でしょう.又,軽い材料(4×15の)が入手出来ない場合は,3×15の適度の堅さの材量(料)を用いれば充分ですが,突込んだ場合の狂いには注意が必要でせう.(最近筆者の機体を見て,カーボンファイバーの入手法を尋ねる方が多いのですが,これは現在の処入手困難です.どうしても欲しい方は,最低ロット分注文する必要があり,約8〜10万円程かかります.筆者が入手した時は1,200×250mmで¥6,000でしたが,今はもう少し高価だろうと思いますし,また最低12枚単位でしか製造してくれないそうです.カーボンファイバーに代わるものとしては,来海君の様に航空ベニアの皮一枚分を貼付けるのが最も安上がりで見かけよりは効果的です.又,模型店に売っているグラスファイバーの繊維をエポキシ接着するという方法も考えられます.いずれにせよ,根気良く良材を捜す努力の方が先でせうし,自分の投上げパワーと相談し直す事も必要です.筆者の場合は,工作がヘタで重くなる故に,バルサ胴を採用したかったので仕方なくカーボンファイバーを貼付けていますが,4×15ヒノキの良材が入手できれば必要は無いと考えています.)
なお,以上の事柄はフルサイズ機についてであり,中型機以下には3×15で充分以上の強度が得られると思われます.
・胴体のプロフィルを考える場合,もうひとつ気にとめておかねばならないのは,胴体の側面効果という事です.図Jの[A]と[B]では余り大きな変化は見られませんが(重心の前後の面積比率がさ程変化しないので),[C]のように後部をしぼった場合はほんの少しですが垂直尾翼を大きくしてやる必要があるかも知れません.又,T‐HLG石川氏機のように機首にキャノピー様のフィンを付ける場合(最近はめったに見当たりませんが…)も,又同様の処置を考えるべきでしょう.(グラスロッド胴体の場合は,更に重要です.)
                                    
■図K
・図K上の絵のように,胴体に対してほぼ0°に主尾翼の取付けられたHLGは,機体の進行方向に対して常に頭を上げた姿勢で飛行するのです(只し,滑空中.上昇時は,ほぼ進行方向と平行になると思われます).図中のαはその角度差を現し,取付角差と重心位置の項にも書いたようにこの角度をBestに持って行く事が大切なのですが,ここでひとつの問題が起きて来るのです.それは,胴体が気流に対して角度を持って置かれる為に抵抗が生じるのです.(飛行とは,実機・模型を問わず,実に抵抗との戦いなのです!)図Kのグラフは,上の絵の角度αを胴体の断面形によって抗力の変化する様子を示しています.○□◎はそれぞれ胴体の断面形です.グラフを見て一寸意外なのは丸胴の意外に抵抗の大きいことです.HLGのαは,普通2〜4°,大きくても5°を超える場合は少いでしょうが,それにしても丸胴の抗力は2割程も大きいのです(F1Bやクープディべーの後部胴体を考える場合,この事は重要です.又,HLGにグラスロッドを用いる場合も,その太さによっては問題が生じるでしょう).又,角胴が意外に抵抗の小さな事にも驚かされます.HLGの常識的迎角では,だ円胴と実質的な差はほとんど無いと考えられますから,苦労して堅いヒノキ材を削る必要性は余りないようです.加工の程度が大きくなるだけ,強度は低下するのですから.
・考え方を変えて,例えば胴体の中心線に対して主・尾翼をある一定の角度(図Kのα)を与えて取付ければ,滑空中の飛行方向と機体が平行になって抵抗が減るのではないか?と考える人が居るかも知れませんが,これは余り得策とは言えないでしょう.理由の@は上昇時には主翼は飛行方向に対して水平か又は極わずかにマイナス角になるので,その場合滑空時用にセットされた胴体は逆に頭を下げた姿勢で飛ぶことになり,抵抗は速度の2乗に比例して増大しますから事は重大です.又,理由Aは,図Kの場合尾翼は主翼の後流(気流が主翼によって乱されたのこりのうずetc.)からある程度離れた位置にあるのに対し,胴体が気流に平行になると,すっぽり後流につかってしまうことになるので効率が非常に悪くなると思われるからです.(上昇時にも同様のことが言えるが,速度が非常に高くR数が大きい等の理由によって,滑空時程には問題にならないでしょう.)


● 図面も引いたし,材料も集まったし… (良い材料の生かし方等について)           ▲Indexにもどる
・良い材料というのは捜すのに苦労するので,出来る限り無駄を少なく用いたいものです.例として,従来の機体の材料取りと最近の機体(いちおう筆者や来海君の用いている方法)の材料取りの一例を図Lに示します.

                          
■図L
・何で又,こんなメンドーなことをするんかいナァーッ?と,多くの人は言うでせう.確かに,その通りで図では[B]を3段上反角として描いてありますが,仮に2段上反角をしても4枚のパネルを貼合せて作るのですから,メンドーなことは確かデス!
・[A]を作るには,5mmの良質のバルサが2枚必要です.対して,[B]には,何と5〜6種類のバルサが必要で,6・5・4mmのソフトバルサ,4・3mmのミディアム・ハードバルサを用意しなくてはなりません.只し,上記5枚のバルサがあれば,主翼は3機分作れます.[B]の場合は,3枚で2機しか作れません.又,[B]の場合,a,b,cの部分に可成り軽量の材料が使用可能で,狂い易く弱い後縁に強い材量(料)が使えるので,後縁の強度確保の為に余り軽い材料を使用出来ない[A]に比べて可成り軽量化出来ます.当然後縁も非常に薄く出来ます.
・[B]の欠点は,前後(aとd,bとe,cとf)の材料同志の接着面積が[A]に比べてせまいので工作段階で狂いが出易い事です.[A]は,主にハイポイントで接着するので幅5mm程ありますが,[B]の場合は3mm以下で,cとfでは1mm以下になってしまいます.只,瞬間接着剤を上手く使えば実用上の問題は余りないようです.
・[B]の実際の工作には,aとd,bとe,cとfを瞬間接着材(剤,デス)で確実に接着し,出来上がった3組6枚のパネルをセメダインC等の余り強力でない(?)接着剤で仮止めしておいて,普通のものと同様に削り,机の角等を利用してバラして上反角を付けます.この工法の長所は,ウォッシュ・イン,ウォッシュ・アウトによる狂いが出にくい点です.
5mmや6mmの,軽くて強いCカットが何時でも入手出来る幸せな人はとも角,材料捜しに苦労されている方は[B]のモザイク法をお試しになってはいかがでしょうか?なお,この方法の場合,aとbには必ずしもCカットは必要なく,Bカット,Aカットでも充分です.


● 美しい機体は,良く飛ぶ…? (仕上げ,ドレスアップのこと)                   ▲Indexにもどる
『美しいクルマは速い』というのは,モータースポーツ(自動車競走)の世界でよく言われる事なのですが,どうやら似たような事が模型飛行機にも言えるようです…
美しい機体,といったら形の美しいものを差す場合と,仕上げの美しいものを言う場合がありますが,形状は設計段階の色々な"必然性"によって決定されてしまうので,これから書くことは主に仕上げに関する事柄です.
・塗料は,相変わらずラッカーを使用する人が多く,ドープ使用派は未だ少数のようです.重量,被膜の強さの点ではドープの方が勝っているのですが,乾燥時の収縮が強いので狂いが出易いのと高価なので敬遠されている様です.然し,収縮が強過ぎるとは言っても,つまる処それだけ強い被膜が出来る訳ですし(只,国産ドープは本当に強過ぎるので問題デス.ハクライ至上主義では決してないのですが,Pactra社のAero Gloss Dopeは適度の収縮で実に使い易いのです),高価とは言ってもAeroGlossの3・1/2オンスが¥350で買え,1ビンで5機は塗れるのですから,投資額はさ程大きいとは言えないでせう(F1Bは,1機で1ビンは使うのデスゾ).
ラッカーにしろドープにしろ,塗装で大切なことは(言いつくされた事ですが),下地を5〜600番のサンドペイパーで仕上げ,目止め(タルク入り塗料又はサンディングシーラー)を完全に行い,適度の濃さの塗料を何度も塗り重ねることです.この塗り重ねですが,1度塗って充分に乾燥させて次を塗ることが大切で,生乾きの状態で塗り重ねることは余り良い結果を得られないようです.
・塗装後,コンパウンドで磨き更にワックスをかける,という人も居るようですが,性能向上にどの程度寄与しているか疑問です(多少はプラス,主に気分的に…といった程度では?).それよりも,塗装の段階で表面を平滑にする努力をすべきでしょう.現在行なわれている方法の内,単簡で一応の効果を上げているのはガンピ(入手出来なければ,エサキ・プライスパンの薄手が安価で良質)を使用することです.翼の抵抗は,前縁からハイポイントまでを平滑にする事によって大巾に減るので,この部分に薄紙を塗料によって貼付ければ,バルサの表面の凸凹は完全に埋まります.前の項で紹介した高速翼型にこの方法を使用すると,投上げ高度が目に見えて高くなります(ホントですヨ!).又,同じ部分にエンジン機用の熱着フィルムを貼るのも効果的です.なお,この方法は極薄く加工した後縁の補強にも非常に有効です.
・証明はされていないのですが,初心者用等の小型・軽量(スパン300mm程度,20g以下)の機体では,翼型を三角翼(▲←のような形)にした場合,表面をザラザラにしておいた方が性能が良い…という意見もあります.これは,この程度の機体のレイノルズ数が極低く,ザラザラ表面による乱流効果が生じる為のようです.只し,普通サイズ以上の機体ではやはりツルツル表面の方が性能は良くなります.カタパルト・ランチ・グライダーの場合などは実験して見る価値はあるかも知れません.
〔※レイノルズ数と空力特性については,会報に連載中の来海君の解説記事を参照して下さい.〕
・HLGは,別名バルサ・グライダーと呼ばれ,普通はクリア塗装しかしないのですが(Cカットの木目を自慢し合う為に?),木の地肌だけの機体は見た目に何となく味気なく,余りやり過ぎて折角の翼表面がデコボコになったり重くなっては困りますが,ある程度は装飾してやりたいものです.F1AやF1Bの場合,紙貼りであることや必ずJAナムバーが書込まれていることもあって,機体を見れば選手も分る,というのが普通です.HLGでも,プラモデルのシールが貼ってあれば浅野先生!とか切紙細工の機体は来海君!とか赤いハートにHと入っているのは筆者!(以前はFAIマークでした.同じマークをT-HLGの勝田・黒川氏が貼っているので…)とか数人は分るのですが.ハデな機体は,回収の時に見付け易いというメリットもありますし,それに楽しいじゃないですか?!少なくとも右翼にJAナムバーを書込む位はして欲しいものです.文字は,インスタント・レタリングが美しく仕上がりますが,軽量バルサの翼ではへこんでしまうかも知れません.塗装終了後,油性の極細サインペン(ミツビシの"PIN"が好調)等でじっくりレタリングを楽しむのも,模型飛行機の喜びのひとつですゾ.
・更に余計なこと…先日の会報にCFCの海老ケ瀬氏が投稿して下さったのですが,氏のおっしゃるように,機体に名前を付けませんか?T-HLGでは,黒川君の有名な"DREAM"シリーズがあります.C-HLGでは今の処,平尾会長の"ハリー"シリーズ,古矢氏の"FLOAT"シリーズ,来海君の"ペネロープ"シリーズ,そして愚作"ホロアホウドリ"シリーズがあります.それぞれ然るべき理由がある(愚作は別,単なる思い付き)名前で,製作者の人柄が偲ばれるのです.


● 勿論,勝つことだけが目的ではないけれど,然し… (資料の収集,作図のこと)        ▲Indexにもどる
・私事ばかりで恐縮ですが,筆者は一応FFフライア-として,現在はHLG及びF1Bを飛ばしている訳ですが,その昔はC/L,R/C(ともにサワリだけ)とライトプレーンを相当(?)やって,現在に到っております.又,フライング・モデル以外にもプラモデルには相当のヒマとお金をつぎ込みました.今でも『Uコン技術』『モデルジャーナル』誌は,広告を含めてスミカラスミマデ全部読みます.陸・海・空の全ての模型(実物も)が筆者の興味の対称です.人によっては,前記の雑誌を買っても,FF関係の記事しか読まないのだそうですが,こんなバカな話はありません.HLG(及びFF全般の)の,多少たりともプラスになる情報は,例えばR/Cグライダーの記事や,C/L速度機の記事,時には電動R/Cカーに関する文章の中からさえ見付け出せます.よく,FFは資料が少ないので…という声を耳にしますが,確かに少ないことは確かで,特に情報収集ルートを持たない初心者や忙しい人々にとっては困ったことなのですが,何もFFに関する資料のみを集めることはないのです.情報は,ありとあらゆる処にころがっています.FF屋は,R/C屋をバカにしますが(確かにR/C屋の多くは,バカにされても仕方がない面を持っています),R/Cグライダー屋のトップ・クラスの連中は,ひょっとしたら多くのFF屋より進んでいるかも知れません.カーボン・ファイバーを最初に使い始めたのは,FF屋ではなく彼等なのです.(『モデルジャーナル』バックナムバーのR/Cグライダーに関する記事を読み直して見ることをおすすめします.)
・自分である程度納得出来る機体が出来たら,その詳細な図面を引いておくのも大変有意義なことです.そういう図面を仲間同志で交換し合う事が,お互いの資料を増し,お互いを刺激し合う最高の方法です.別に,何処で何位に成った機体,というのでなくとも,設計者がひと通り満足していれば充分なのです.
他人に見せる為の設計図の見本(書き方の見本)として,愚作"SuperホロアホウドリZ-15"の図面を載せておきます.t.6.0とかあるのは,その部分の厚み,←→は木目の方向です.同機は,4月々例会で新人山本君により3位に入りました(投げ手が良ければ,機体なんぞどうでも良い,ことの証明です).他に何も作るものが無くて困っている人はドーゾ.


● 最後に,『Super HLG』とは何ぞや?ということについて… (定義とあとがき,の如きもの)   ▲Indexにもどる
サーマルに乗れば板切れだって視界没になるサ!…というのが,昨年10月,名古屋で行なわれた3地区合同大会に参加した筆者の正直な感想でした.中部・関西の選手達は,いわゆるサーマル・ハンティングに恐ろしく熟達しており,"FLASH"を極度に簡略化した様な設計の機体を次々とサーマルに乗せて上位を独占してしまいました.恐らく,サーマルに乗らなければ30秒程度であろう性能の機体で.我々関東のHLGは,明らかに彼等中部・関西とは全く別の方向への発展をとげて来たものの様です.
・T-HLGを中心とする関東HLG屋達が目差して来たもの,それはサーマルによらずとも確実にMAXを出し得る機体,本特集のサブタイトルの『絶対性能60秒を目差して』のHLGです.それがすなわち,超えてるHLG,Super HLGなのです.HLGを単なるサーマル・ハント競技ではなく,あくまで設計・製作・飛行の3ツの技術力の総合スポーツとして考えた人々の夢なのです.
・現在,静止気流で50秒を超えるHLGが何人かのフライア-によって実現されつつあり,常に60秒という夢も現実になりつつあります.HLGの世界に足を踏み入れた以上,この夢に挑戦するのは…スポーツとは,決して現状に満足してしまわない事,だと筆者は考えるのですが.


*Good grief*… (C,B,の真似をして)
書かねばならぬ事が山程あった筈なのに,書かずとも良い事のみ山程書いてしまいました.読んで下さった方に感謝すると同時に,たとえほんの少しでもその方のプラスになる部分があったであろう事を筆者としては願っております.どのような批判もお受けします.直接,筆者までお申し出下さい.(間接的批判では,政治にはなってもスポーツにはなりませんから)                                                     片岡

                                                        ▲Indexにもどる

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