ハンドランチグライダーの飛ばし方
                           FLYING HAND-LAUNCH GLIDER JOHN KAUFMANN

                T−HLG&Y−MAC技報(特別号) 禁無断転載  訳:勝田大一 1976‐3‐13

ジョン・カウフマンのHLGの飛ばし方のうち、調整と飛ばし方の章を訳してみなした。訳がまずくてわかりにくいところがあるかもしれませんが、これだけ詳しくまとめられた記事はいままでありませんので、かなり皆さんのお役に立つだろうと思います。なお、文中のカッコ内の〔*:〕印は訳者の註です。
 
                                        参考資料 “Flash”2例,“U.S.Kid”
試験飛行と調整    ▼次章「飛ばし方」へ
 グライドテスト / 旋回調整 / フル・グライド・パターン / フル・スロー / かえり / ネガティブ・インシデンス / ロール


機体ができ上がったら試験飛行をして調整をしなければいけません。HLGは(ハンドランチグライダーの略)を正しく調整できるのはエキスパートフライヤーです。
多くのエキスパートフライヤーは年中色々な事をやってみて、うまくいったり、失敗したりなどで苦労して調整のコツをつかむものです。全く今まで飛ばしたことがなくても、ここで書かれている方法でやれば無駄な時間を費やすこともなくHLGの調整法を憶えられるでしょう。
機体はその長さ方向に沿って、あるきまった点で前後の重さが丁度等しくなります。このバランス点のことを重心またはC.G.と呼びます。
C.G.の位置は通常、主翼の前縁(LEADING EDGE 略してL.E.)から後へコード(翼弦)または巾の1/2〜1/3の所にあります。
この本のHLGを正しく飛ばすためには図面のように主翼前縁から後へ1・3/4"のところでバランスするようにしてください。
主翼下面の前縁から1・3/4"のところに印をつけます。

図のように直角三角定規を使ってマークした線をのばして下さい。細工用粘土をノーズ(機首)に少しくっつけて下さい。(*:日本では鉛の板おもりを普通使います)
ハサミの先(*:ディバイダーとかコンパスの先でも良い)を4〜5cm開いて図のように主翼下面のC.G.ラインで支えてみます。この状態で前後が丁度バランスするようノーズの粘土を加減して下さい。粘土はノーズの上部にしっかりつけます。ノーズの先端とか下部につけると着地のときにこすり取れてしまうので避けてください。


調整の最初のステップはグライドテストです。
グライドテストは風速2m/s以下のおだやかな日に行なうべきです。
もし風の強いときにテストすると、グライドが良くなかった場合それが調整が良くないためなのか、風のせいなのかわからなくなります。
テストに一番良い時間は、午後おそくか夕方です。その頃は日中とか午前にくらべて上昇気流が強くないのでkれによって無くす心配は殆どありません。したがって最初からうまく調整するためにも夕方にすべきでしょう。
テストは必ずやわらかい草地で行い、硬い地面やコンクリートの上は絶対に避けて下さい。草地なら失敗しても機体をあまりこわすことはありません。
テスト飛行には粘土(または板おもり)、接着剤、バルサ板少々、カミソリの刃、サンディングブロック(320番位の耐水ペーパー付)などを忘れないように持って行きましょう。
グライドのテストは風に面して機体を眼の高さに支えます。そしてノーズ(機首)が僅かに下を向くようにして下さい。(*:グライドテストでは主翼の下、重心附近の胴体を軽くおさえるようにして支えます)そしてその方向へ軽く押出すようにして投げます。(*:思い機体はやや強目に、軽い機体は軽く投げるのがコツですがそのときの風の強さによっても多少加減が必要です。この感じは何回かやってみないとつかめないでしょう)
ノーズを上へ向けたり、あまりそーっと投げたりすると主翼の揚力が急激に失われて…失速して突込むので注意して下さい。
投げ方が正しくてもノーズを上げて失速する場合があります。このときはノーズに粘土(または板おもり)を少しづつ足してフラットで伸びのあるグライド(*:着地寸前でもグライドが充分伸びてなかなか着地しないような感じのグライド)になるよう重心(C.G.)を調整して下さい。
            
前とは逆にノーズを下げて急激に突込む場合は、水平尾翼中央の後縁(TRAILING EDGE、略T.E.)の接着を少しはがして図のようにわずか上に曲げて下さい。(*:水平尾翼の中央でなく翼端でも左右両方とも同じに曲げれば効果は同じ、普通は翼端を曲げる。中央の接着をわざわざはがしなさいと云うのは中央なら左右の曲げの量の差による悪影響がないと云う考え方からでしょう)

それには窓ガラスをくもらせるときのようにはぁーッと、息を吹きかけながらバルサをわらないよう少しづつそーっと曲げます。息のわずかな湿り気の効果がバルサを曲げ易くします。
主翼や垂直尾翼をたわめる(曲げる)ときも同じやり方を使って下さい。

〔*:ノーズを下げてすぐに着地するようないわゆる突込むような感じのグライドのときは、ここで書かれているような調整法では解決しません。このようなグライドは明かにノーズが重いためですから、ノーズの粘土(または板おもり)を少しづつ減らしてグライドがフラットになるまで調整します。本文では、重心はグライドテストの前に指定の位置(前縁から1・3/4")に合わせたものとして説明を進めているので、このような書き方になっていると思われます。一般的には初心者は特に…テイル側(尾翼側)が材料えらびや工作技術の関係で重くなり勝ちなので、ノーズのおもりを減らすと云う場合は少ないことにもよるかもしれません。 水平尾翼後縁をわずかに上へ曲げるような調整法は、グライドがフラットよりごくわずか突込む感じ位のときに有効であって、本文のような急激に降下するようなグライドの場合には適しておりません。翼の曲がり(たわみ)は空へ投上げるランチング時の上昇姿勢に非常に影響を与えます。HLGは上昇時は非常に高速なのでわずかな曲り(たわみ、捩れ)でもその影響はベラボウに大きいのです。むしろ翼を曲げるやり方は上昇姿勢の調整に用いるべきでグライドテストは、あくまでノーズのおもりの増減によるC.G.の移動によって行い最良の滑空姿勢を得るべきだと私は思います。つまりグライドテストのようなゆっくりした滑空速度のときに合せた翼の曲り(たわみ)は、本格的なランチングの高速時にはその影響が強く出過ぎて合わないと云うことを強調しておきましょう。本文ではこの後も翼をたわめる調整が各所に出てきますが,上に述べた速度の影響を常に念頭においてたわみ(曲げ)や捩りを与えるときは充分注意して行って下さい。また無理に与えたたわみや捩りは日光、温度、湿度などにより元に戻り易いことも頭に入れておいて下さい。〕

さて、グライドテストをまたやってみましょう。もし未だ突込み気味ならば(前ページの図のようにして)水平尾翼後縁と胴の間の接着をもう少しはがしてバルサのくさびを入れ曲げを少し増して下さい。(*:あまりこのやり方はやって欲しくないですね!!)
これでさらにノーズの粘土(おもり)を一寸減らしグライドが失速しかけるすれすれまで減らしてみます。(失速したらおもりを足して戻して下さい)…〔*:失速気味の調整は風の強いときに不利ですから程々にして下さい。要は充分に伸びのあるグライドになれば良いのです〕
さてこの状態で次の旋回調整に移ります。

HLGはランチング(投上げ)で高く上昇後、風下に流れながら旋回させるようにします。旋回するよう調整するのはいくつかの理由があります。その1つとして、風下へ真直に飛ぶとすぐ見えなくなると同時に、飛んでいる時間も短いことになります。これは風が強いときは特にそうです。一番大切なことは(*:旋回させる最大の理由)上昇気流の中で旋回させておけば飛行時間が長くなると云うことです。…(*:真直に飛ぶと上昇気流中からすぐ抜け出してしまいますね)
旋回に対しては垂直尾翼(の翼型…)が最も利きます。その上、垂直尾翼をたわめる(曲げる)とさらに旋回し易くなります。旋回方向はランチング方向と反対にします。つまり右投げの人は左旋回、左投げの人は右旋回にします。
まづ、垂直尾翼を後から見て、右投げの人は左へ約1/32"(0.8mm)、左投げなら右へ約1/32"(0.8mm)たわめ(曲げ)て下さい。
      
これでまたグライドテストをやってみます。ノーズを下げて突込むとか失速しないでゆるやかに旋回すればO.K.です。もしこれで失速や突込む場合は、水平尾翼の曲げとか、ノーズのおもりを加減してグライドが滑らかになるまで調整して下さい。
もし旋回しないで真直のままならば、垂直尾翼をもう少し曲げてみます。旋回がきつ過ぎる場合は、ゆるやかになるまで垂直尾翼の曲げを戻して下さい。
        
垂直尾翼をわずかに曲げたつもりでも、旋回のバンク(傾き)がきついことがあります。その場合はテストを止めて両側のアライメントをしらべましょう。つまり左右の主翼が捩れたりしていないかをしらべます。(*:これは非常にわずかでも利くので注意深くしらべて下さい。特にランチングの高速時に影響が強く出て極端なときは左右いずれかに突込むことがあります)

翼のL.E.(前縁)を上へT.E.(後縁)を下へ曲げるのをウォッシュ・イン(WASHIN)と云います。(*:単にT.E.だけを下に曲げる場合もこの言葉がよく使われます)ウォッシュ・アウト(WASHOUT)はこの逆でL.E.を下へT.E.を上への場合を云います。
      
ウォッシュ・インは揚力を増す効果があります。したがって旋回外側の主翼をウォッシュ・インする(またはそうなっている)と旋回が非常にきつくなり、ひどいときはスパイラル・ダイブ(螺旋降下突込み)にさえなります。ウォッシュ・アウトは逆に揚力を減らす効果があります。もし、旋回内側翼がウォッシュ・アウトになっていると、前と同じように旋回がきつくなるかまたはスパイラル・ダイブで突込んでしまいます。
ですから旋回外側翼のウォッシュ・インや旋回内側翼のウォッシュ・アウトとかその他のたわみ(捩れなど)に気がついたら飛ばす前にこれらを除いておかなければいけません。現場で翼を捩るとかなにか別の方法で修正できればやってみて下さい。もしだめなら自動車のカー・ヒーターの熱い空気などを利用して捩れをとってみましょう。(*:自動車がそのとき無ければダメネ)。もし簡単に直りそうもないときは、飛ばすのを止めて家へ帰り、蒸気(ヤカンの湯気とか…)を使って下さい。
このようにして修正した後でも飛ばす前にときどき捩れが元に戻っていないかを注意する必要があります。

〔*:ここまででグライドテストの第1ステップは終りです。ここで初心者の方に2、3、注意しておきたいことがあります。本文では旋回調整のところで最初から垂直尾翼を曲げるよう書かれています。しかし普通は製作のときに旋回させるための水平尾翼傾斜取付をします(この資料にはありませんが本文の製作記事の項には傾斜取付が指定されています)から、機体が正確に作られているなら、垂直尾翼を曲げなくても、テストの最初からゆるやかな旋回をする筈で、したがってテストの前に垂直尾翼を曲げる必要はありません。テストをして旋回しないとか旋回がきつい場合は、まづ主翼の左右の捩れ、水平尾翼の左右の捩れ、垂直尾翼の曲がり、胴体の曲がり…胴体が曲っていれば垂直尾翼が曲っているのと結果的に同じ…など各部を念入りに調べることが大切です。左右の主翼の重さが材料取りの関係で違っていることがありますが、これも原因の1つになります。その結果、どこも異常がないときに初めて垂直尾翼をいじって下さい。しかし垂直尾翼は利き方が烈しいのでなるべくさわらない方が良いのです。垂直尾翼をいじらずに旋回調整するには、主翼々端におもりをつけるとか、胴体を捩って水平尾翼の傾斜を変えてみるなどいろいろの方法があります。〕

空高く投上げる前に、フル・グライド・パターン…つまりこれまでのテストではグライドの一部分しか見ていませんので1旋回する位の長いグライド…を調べます。
それには、(旋回中の機体のバンクを同じように)旋回内側主翼をバンクさせ、(*:左旋回の機体なら左主翼を傾ける…余り傾けると突込むので注意)旋回グライドに入るよう中位のほどほどな力で、軽くやゝ上向きに投げてみます。
この投げ方は、HLG標準の投上げの場合と反対のバンクをさせるため、少々練習が必要です。同じように飛ぶまで何回か投げて下さい。投げがまづいとうまく旋回してくれないでしょう。もし投げが弱過ぎたり、バンクが強過ぎたりすると、投上げの角度によってはスパイラル・ダイブになるかもしれません。また投上げ角度が上向き過ぎたり、バンクが弱かったり、または全然バンクさせないと失速になるでしょう。
    
HLGの回り具合を見ながら旋回の円(直径)を調べてみましょう。
旋回の直?は大体15mから30m位までの範囲が適当です。もし旋回がきつ過ぎてバンクが強くスパイラル・ダイブ気味の場合は調整が必要です。垂直尾翼の曲げを減らし(*:旋回をゆるめるように…、垂直尾翼を全く曲げなくても旋回がまだきついときは、反対方向に曲げて修正する必要があるかもしれません)、水平尾翼後縁をもう少し上へ曲げ(前に水平尾翼中央に入れたバルサのくさびをもう少し押込むと後縁が上に曲ります)、さらにノーズのおもりを少し減らしてみます。
これらの調整は、投げて具合を見ながら、順序立ててほんの少しづつやってみて下さい。
きつい旋回を直す別の調整法として、旋回内側のウォッシュ・インがあります。これは旋回内側に揚力を発生させ、主翼(旋回内側の)を持ち上げるように働きますから、グライドの旋回?が結果的に大きくなります。

ウォッシュ・インするには後縁が下へ約1/16"(1.6mm)位曲るよう、前縁が上がる方向に主翼全体を捩ります。(*:この修正は2段上反角の後縁継目の接着を少しはがしてやらないと実際にはうまく曲りません。私はこのような場合、翼端部の後縁だけを下に曲げていますが、それでも充分効果があるようです)
もし旋回せずに真直だったり、旋回?が大き過ぎる場合は垂直尾翼の曲げを少し増してみます。垂直尾翼は利かせ過ぎるとスパイラル・ダイブの危険があるので、これを避ける別の旋回調整法として、水平尾翼の傾斜を増すやり方があります。この方法は、スタビライザー・ティルト(STABILIZER TILT)またはスタブ・ティルト(STAB TILT)とモデラー達は呼んでおり、垂直尾翼の旋回効果を助け、これと同じ働きをします。(*:垂直尾翼より利き方がおだやかです)
前から見て水平尾翼々端が水平より上がっている方向に旋回し、この度合が大きくなるにつれて旋回もきつくなります。スタブ・ティルトは旋回調整の初歩と云えるでしょう。この方法は上昇時にはわずかしか利かないので、垂直尾翼の曲げ過ぎよりは安全です。
貴方のHLGは製作時にスタブ・ティルトをつけている筈です。スタブ・ティルトを調整するには、まづノーズから後を真直に見て旋回内側主翼と水平尾翼のアライメントをよく調べます。スタブ・ティルトを増すには、後の方の胴体を捩って旋回内側水平尾翼々端が約1/16"位上がるようにします。捩るときは傾斜が強くなり過ぎないように注意して下さい。(*:捩るとき胴体を曲げないよう充分注意して下さい。私の失敗をお話しておきますと、旋回を強めにするつもりで胴を捩ったら、逆に真直に飛んでしまったのです。よく調べたら捩るとき胴を曲げてしまったので垂直尾翼も一緒に曲ったことになり、これが旋回と逆の方向に曲げたのと同じ結果になってしまった訳です。)
傾斜(スタブ・ティルト)の度合は主翼上反角の半分より大きくならないようにして下さい。

弾力のある材質の胴体では、折角捩っても元に戻り易い傾向があるので、家に帰ったならば戻らないよう傾斜を固定する必要があります。それには水平尾翼接着部をシンナーで溶かし(溶剤を使えば接着がはがし易いと云うこと)、傾斜をちゃんとつけ直し、再接着します。
旋回はきついがバンクは強くないと云う場合は、多分スタブ・ティルトが大き過ぎるためでしょう。きつい旋回はグライドの効率が落ちるだけでなく、飛行時間も短くなります。ゆるやかでフラットな旋回にするためには、旋回内側水平尾翼々端を下げてスタブ・ティルトを減らします。
スタブ・ティルトはフラットな旋回をさせるのに有効ですが、これに必要量の垂直尾翼の曲げが加わるとバンクの強い旋回になるかもしれません。
フラットな旋回をさせるのに良い方法は、旋回内側主翼のウォッシュ・インをさらに増すことです。主翼のウォッシュ・インに対するスタブ・ティルトと垂直尾翼の曲げ…これら相互の関係を見ながら、良い旋回(グライド・サークル)となるまで少しづつ調整して下さい。
きつい旋回にはウォッシュ・インをうんと必要とするが、ゆるい旋回は少しで良い(なくて良い場合もある)ということをよく憶えておいて下さい。
〔*:垂直尾翼を曲げ過ぎ、スタブ・ティルトをつけ過ぎ、これをウォッシュ・インで相殺すると云うような、いじり過ぎの調整をしないよう注意しましょう。いじり過ぎであちこち僅かでも曲っていると、フル・スロー・ランチの時に影響があることをお忘れなく。〕

旋回調整が終ったなら、いよいよフル・スロー(FULL THROW)です。
貴方が知っている一番広い場所(原っぱ)で飛ばしましょう。もう一度云いますが飛ばすのは(全く)無風でおだやかな日を選びましょう。
HLGが何にもぶつからずに風下へ流れて行くよう十分余裕を見て…原っぱの一番風上側から投げるようにします。投げるときは風に面して下さい。
フル・スロー・ランチング(FULL THROW LAUNCHING)は機体のバンク角度と投上げ角度をうまく組合せて投げなければなりません。
バンクは、グライド調整ででき上がっている旋回の強さを上昇時に打消すよう旋回と反対側にします。(*:つまり、グライドが左旋回なた右へバンクさせます。)
上昇の頂点に近づくにしたがって(投げによる)上昇のパワーが減り、バンクの効果も減少し、機体の速度が落ちます。
ここで(上昇の頂点)旋回調整が利きはじめ、旋回グライドへとは入って行きます。この点をロール・アウト(ROLL-OUT)、リカバリー(RECOVERY)、トランジション(TRANSITION)と呼び(*:私達は"かえり"と呼んでいます)、全飛行中で最もむづかしく重要な部分です。
スタートのときは約30°位バンクさせます。バンクが弱過ぎると上昇の頂点で失速する原因になるます。逆にバンクが強過ぎると、投げ側(右投げなら右側)へスパイラル気味に低く回り込む原因になるます。
したがって完全なサイド・スローは禁物です。つまりサイド・スローはバンクのコントロールがむづかしく、バンクつけ過ぎの場合はスパイラル・ダイブで地面へ突込むおそれが多分にあります。したがって投上げの角度、バンクの角度は非常に重要です。あまり上へ向けて投げると上昇の頂点で失速する原因になります。と云うのは上がり切ったところでノーズが上を向いたまま速度が無くなり揚力を失ってしまうからです。したがって上昇の頂点で失速しないでスムーズに旋回グライドへ入るには充分な速度(投げのパワー)が必要だと云うことをよく憶えておいて下さい。(上へ向け過ぎたときは特に)
頂点で失速する場合は、もう少しバンクさせ、投上げの角度を減らしてみます。投げが良く(正しく)ても、うまく上昇しない ― 何が悪いのでしょうか?
第一に、テストグライドのゆっくりした速度では多少良くない調整でも欠点が出なかったのかもしれません。けれども、フル・スロー・ランチング時の速度は120km/hr.以上にもなるので、主翼、水平・垂直尾翼の僅かな曲げが急にいろいろなトラブルの原因になってきます。
     
これは、高速時は非常に感度が高い(つまり、低速時より利き方が烈しい)ことを表わしており、単にグライドの調整だけでなく、上昇時の(高速用)調整も必要であることを意味しています。
ノーズが上を向き(急角度のヘッドアップで)、失速して真直に地面へ突込んだとしましょう。主翼と水平尾翼が正確に同じ角度で(つまり角差0°)胴体へ取付けられていてもそうなります。この角差0°の取付方法は、より高く上昇させるためのHLG独特のやり方(秘密)なのです。しかし、上がり切ったところでうまくかえらせるためには、主翼と水平尾翼のほんの僅かな取付角差が必要なのです。

水平尾翼は主翼よりごく僅か下向きの角度、いわゆるネガティブ・インシデンス(NEGATIVE INCIDENCE*)でセットしなければなりません。(*:この用語は1つの翼の迎え角だけについて呼んでいますが、私達の間では主翼と水平尾翼の2つの迎え角を相対的にとらえ角差で考え、この場合を"プラスの角差"と呼んでいます。――――――つまり水平尾翼に対して主翼が上を向く――プラスの角度――になっているからです)
しかしこの角差は最初から意識的に寸法をきめて接着するものではなく、最終的な調整の曲げできめるべきものです。
ネガティブ・インシデンス(プラス角差)を与える1つの方法として、主翼に対して水平尾翼全体を下へ傾ける方法があります。
しかし、ハイ・スピード・ランチングによる飛行と云う面から、この方法は一般的に、早く上がり切ってしまい、上昇高度があまりとれない(少ない)と云う欠点があります。
ネガティブ・インシデンス(プラス角差)をつけ過ぎた機体は宙返りし易く、市販の安い既製HLGでは屡々それがあります。
良いかえりのためのネガティブ・インシデンス(以下プラス角差と云いかえます)を充分与えて、なおかつ高く上昇できる良い歩法があります。
それには、主翼と水平尾翼を同じ角度で(0−0°)正確に胴体へ取付け、水平尾翼中央部の後縁をごく僅か上へ曲げます。常にできるだけ僅かなプラス角差でやってみて下さい。
水平尾翼のインシデンス(迎え角)を安全に調整するには、バルサのくさびを後縁の中央に入れ(*:2ページの図参照)、これを少しづつ出し入れして曲げを加減します。
最初は宙返りするかもしれません。
しかし、これは高空から垂直にダイブするよりは安全です。宙返り上昇を直すのは簡単で、くさびを少しとって後縁の上曲げを減らせば良いのです。投げて上昇具合を見ながら、くさびを少しづつ抜くか、あるいは取ってしまうかして後縁の曲げを除々に減らして下さい。
"かえり"が悪くなりはじめる点までは(後縁の曲げが減るにつれて)上昇高度が増えていくのがわかるでしょう。
この"かえり"の限界点で水平尾翼後縁をごく僅か上へ曲げます。―――これで最高の調整が得られたことになります。
以上の調整方法でやっても、相変わらず宙返りやダイブが直らない場合は、直線定規などを使って主翼と水平尾翼のセッティング(取付)を調べて下さい。ダイブする場合は水平尾翼の取付角が主翼より高目になっているせいでしょう。(つまり、ポジティブ・インシデンス…プラスの迎え角…云いかえればマイナスの角差になっているわけです。)
宙返りの場合は、これと逆で水平尾翼のネガティブ・インシデンス(プラス角差)が原因でしょう。もし、主翼と水平尾翼の取付が完全に同じ角度(0−0°)でない場合は、接着をはがし水平尾翼をつけ直して主翼と正確に同じ角度(0−0°)になるようにします。



以上のほかに…ロール(回転)上昇の場合の調整はどうすれば良いかと云う問題があります。これには2つの極端な場合があります。
1つは、充分バンクさせ投げてもグライドと同じ方向の急なロール(*:つまり右バンクで投げても左のロールになる)になる場合…"かえり"は素晴らしく、グライドの旋回具合も申し分ない。しかしこれを何とか真直にしようとして、うんと高く上げるつもりで力一杯投げ過ぎるとひどうスパイラル上昇になる。…
もう1つの場合は、投げ側の方向に低い高度でぱっと逃げてしまう…グライドの旋回は良いが、ロールは余りせず"かえり"もスムーズでない、そして投げが非常に正確でないといけない(大変むづかしい)…。
ロール上昇をうまくコントロールする良い方法は、水平尾翼に捩りをつかうことです。(スタブ・ツイスト STAB TWISTと呼びます)
水平尾翼は主翼より面積が小さく、翼端までの長さも短いので、胴体を支点とするテコ作用の影響が小です。
したがって水平尾翼の捩れは、ランチング後の高速時のみ、その影響が出ます。上昇の頂点に近づくにしたがって速度が減ってくると、捩れの影響も減ってきます。ついにゆっくりしたグライド速度になると僅かな(グライドの)旋回効果だけになります。
と云う訳で…水平尾翼の捩り(スタブ・ツイスト)は上昇をコントロールするための貴重な(大切な)調整方法です。何故なら、その強い効果は高速時だけだからです。
水平尾翼後縁の片側を捩り上げ、もう片側の方は捩り下げます。上った方の側はウォッシュ・アウトになっているので揚力が減り、下っている側はウォッシュ・インですから揚力が増えます。この調整でローリング・フォース(ROLLING FORCE 回転力)が作り出され、水平尾翼の捩れ具合によって、上昇中のロールの程度が強かったり、弱かったりします。


さて、ここでグライドは良いが、充分バンクさせても(グライドの)旋回と同方向にきついローリング・スパイラル上昇だったとしましょう。この場合は旋回外側の水平尾翼後縁をごく僅か上へ曲げ、反対の旋回内側の後縁を僅か下へ曲げて下さい。(上図左側参照)この曲げはロール上昇に対して反対方向のローリング・フォースを生じさせ、真直に上昇させる元になります。
この調整は、上昇中の垂直尾翼の旋回効果にさからって働くので、上昇時のスパイラル・ダイブの危険を心配せずに(旋回をきつくするための)垂直尾翼の曲げを増すことができます。その上、この垂直尾翼の曲げの余分は"かえり"を非常に素早くさせるのに役立ちます。
次にもう1つの…投げ側へぱっと逃げてしまう上昇の場合は前と違うやり方で水平尾翼を捩ります。旋回外側の後縁を下へ、旋回内側後縁を上へ僅か曲げて下さい。(上図右)この調整はロール上昇をし易くさせ、"かえり"をスムーズにします。スタブ・ツイストは必ずしも両側(旋回外側と内側の後縁)とも曲げる必要はないのです。片側だけの曲げで、ローリング・フォースは充分のときもあります。どうすれば一番良いのかは、実際にいろいろやってたしかめてみることです。

さてこれで貴方のHLGは高く上がり、グライドもスムーズ、旋回もフラットで万事O.K.になったことでしょう。調整飛行は大成功のゴールを踏んだわけです。
これ以上は何もすることはないとまづ感がえるでしょうね。しかし実際には天気の具合、風の変化等いろいろ違った條件(状態)のもとで飛ばすのが普通です。條件が変ったときは、投げ方だけでなく、調整をもそれに応じて変えねばなりませんし、また、より長く飛ばすためには上昇気流を捜し、これにうまくのせることも必要です。
調整はほんの第1歩なのです!!

 

飛ばし方    ▲前章「試験飛行と調整」へ
 ランニング・スロー / 上昇気流 / サーマル・インジケータ / 無風時 / 風のあるとき

良い飛行(フライト:FLIGHT)は良い投げから始まります。どんなに注意深く調整された優秀な機体でも、まづい投げからはまづい飛行しか生れません。良く飛ぶか飛ばないかは投げ方次第できまりますから、何時でも投げ方に注意して下さい。
貴方はうまく投げられますか?そしてもっとうまく投げられるようになりましたか?
貴方は殆どそのままの位置から投げているか、またはほんの1〜2歩前へステップして投げているかもしれませんね。
運動選手が槍を投げるときとか、外野からホームプレートへ送球するときは、投げる力に勢いをつけるため必ず前へ走ります。いわゆるランニング・スロー(RUNNING THROW)は力が一段と入ります。そのリズムが自動的になれば(動作がリズミカルになれば)コントロールも良くなります。
より強いパワー(力)とより良いコントロールによって一層確実に高く投げられるので、ランチングにはランニング・スローを是非使って下さい。
ランニング・ステップでスピードをつけるには、機体を手から放すとき、投げ側の足を最後のバネ足として利かせます。
完成されたこの無理のないランニング・スローは、バック・ステップ(BACK STEP)と呼ばれることもあり、多くのトップ・フライヤー達が最高のパワーを得るためこれでやっています。バック・ステップは最後のバネを大きく(長く)利かせられるようにするため、助走ステップから機体を放そうとする一歩手前のバネ足(の位置)を別の足の後へ踏み出すようにします。
           
ランニング・スタートするときは、何時も同じ足から踏み出し、同じステップ数でやるようにします。この方法をリズミカルに確実にやれるようにすれば、何回やっても同じ投上げ角度、バンク、スピードで投げられるようになるでしょう。
投げのパワー(力)よりコントロールがもっと大切だと云うことを決して忘れないようにしてください。

投げ方を良くすることは、より長く飛ばすのに役立っているでしょう。
しかし、上昇気流(揚力)を利用する方が長時間飛ばすには良い方法です。上昇気流は飛ばそうとするときに何時でも、何処にでもあるものではありません。それが確実にありそうな場所を捜さなければならないし、またそれが発生(発達)するまで屡々待たなければなりません。
このように投げるための何時、何処でを知ることは、投げ方を知るのと同じ位に大切なことです。
上昇気流(揚力)はグライドにどう影響するのでしょうか?

優秀なHLGが通常の沈下速度でグライドするときは約60cm/sec.の割合で高度を失います。上昇気流HLGの沈下速度を遅くさせるので、滞空時間を長くする元になります。気流の上昇速度が30cm/sec.のときは、HLGは60−30つまり30cm/sec.で沈下することになります。
と云うわけで、HLGは普通30〜40sec.(秒)の滞空、場合によっては60〜80sec.(またはそれ以上)飛ぶかもしれません。
上がりもせず、下がりもせずで同じ高さのところをくるくる回っていることがあります。このときはちょうど機体の沈下速度と同じ(釣合う)約60cm/sec.の上昇速度の気流の中を回っていることがおわかりでしょう。
もし、仮に240cm/sec.の強い上昇気流に出会ったとすると240−60、つまり180cm/sec.の割合で高度が上がります。こんなとき、HLGは特急のエレベーターで上がるように急速に高い空の彼方へ消えてしまいます。
3.6m/sec.以上の強烈な上昇気流中では、HLGは3m/sec.以上の上昇率になり、1分間に180m以上の高度になります。このような上昇はちょくちょくはおきないけれども、あることは確かで、HLGはあっと云う間にちっぽけな回る点となってしまいます。
サーマル(THERMALS:熱上昇気流)はソアリング(SOARING)時の機体により強い揚力を与えます。
日光で、ある特定の場所が他の場所より急速に暖められると、その場所の空気も暖まって上昇し始めます。舗装された場所、泥土の道、乾燥した原っぱ等は速く暖められ、森、湿原、畑等にくらべ熱の発散が盛んです。暖まった場所の空気は上昇し、囲りの冷えている場所から空気を吸い込みます。
暖められた空気は回りながら上昇し、膨張して上向きの大きな気泡になります。囲りの空気は気泡の中へ流れこみ、上下回りの渦を巻きながら大きくなって行きます。そして最後には冷たい空気が気泡の下へ流れこみ、気泡の上昇が始まります。




風の速さと気泡の上昇速度次第では、気泡が連続して地面からの上昇気流の円柱ができるかもしれません。無風のおだやかなときは、この円柱から気泡の塊が分かれていくのに数分位かかるでしょう。風のあるときは、このサーマルの塊(気泡)はすぐに(素早く)分かれてしまいます。
上昇する気泡は暖かい空気が真中を吹き上がり、それが上から溢れ落ち…上下回りの渦を巻くドーナツ型のサーマル・シェル(THERMAL SHELL)へと発達して行きます。サーマル・シェルが上昇しながら風下へ流れて行くとき、機体はシェル中央部の強い揚力の気流の中を回りながら一緒に流れて行きます。
長時間飛ばす一番良い方法は(このように)上昇するサーマル・シェルの中へ投げ上げることです。しかしサーマルはどうやって見つけたら良いのでしょうか?
見つけ方を練習するために陽の照った弱い風のあるときをえらびます。このような状態のときがサーマルを最も簡単に見つけられます。
もし、できれば舗装または泥土の出ている場所(*:サーマルの発生し易い場所)から風下の位置に立ち、風に面して下さい。つまり、こうして風上(*:サーマルを発生する場所)からの空気の暖かさ(温度)とかその速さを感じられるようにするわけです。空気は時々静まって暖かくなるのでそれに注意して下さい。
そうするには暖かい空気が気泡に膨張する中(範囲内)にいるようにしなければなりません。気泡は囲りの空気を吸いこみます。逆に風上方向へも吸いこまれる分の空気があるので風の効果は相殺され、一寸の間、無風になります。囲りが段々暖かくなってくるのがわかるでしょう。これは(サーマル・シェルの)準備ができた合図(サイン)です。
気泡がゆっくり風下へ動き始めると、まづ前の方からそよ風がそっと吹き始めます。しかし、未だ投げてはいけません。
投げるのは、そよ風が強くなり出して空気が涼しく感じられるようになる、ちょうどそのときです。
急に風が強く(速く)なるのは、風下の気泡へ囲りの空気が吸いこまれていく速さと、気泡が立ち去るとき、元に戻った風の速さが足されるためです。風上に向って投げると、機体はスパイラル気味に傾きながら上昇し風下へ向い、サーマルをとらえ、その真中で旋回を始めます。
       

本格的にやる多くのフライヤー達は上昇気流を見つけるために、サーマル・インジケータを使います。
これにはいろいろなタイプがあるますが、HLG用にはストリーマーが一番良いでしょう。
最も簡単なストリーマーはウィンド・スティック(WIND STICK)で、6.4mm?の棒、長さ約1mの一端をとがらせて地面へ刺せるようにします。
そして、25mm巾、長さ約60cmのプラスチック・フードラップ(*:無ければ荷造り用のプラスチックのうすい袋帯状の紐でも役に立ちます)を棒の一番上に結びつけて下さい。
これを風上に立てておけば、風の速さと方向がすぐにわかるわけです。と同時に近づいてくる気流の静まりやスピードアップもわかります。さらに正確で高感度のインジケータが必要なら、焼6mのポールのてっぺんに特に軽いストリーマーをつけたものを使うと良いでしょう。
ポールは魚釣用のファイバーグラス製が最高です。先をとがらせた鉄のアングルか硬いアルミニウムの杭(くい)をハンマーで地面へ叩きこみ、ロープかエラスチック・ショックコードでポールをこれに縛りつけます。
使用するストリーマーには、ストローテックス(造花用)か、うすいマイラーテープが良いでしょう。
6mの高さにあるストリーマーは、地面附近の乱流域より上にあるため、ウィンド・スティックよりはサーマルの通過をはっきり見せてくれます。

微風で、強い上昇気流があるとき、ストリーマーは気泡の膨張につれてその端が上へ上がります。それから気泡が通り過ぎて後へ行くとストリーマーは下がり、風下方向へなびき始めます。投げるのはこのときです。
強い風のときはサーマルはさらに速く通過するので、ストリーマーの動きはもっと瞬間的です。
空気を感じる自分の肌を含め、サーマル・ディテクター(THERMAL DETECTOR)で最高のものは何かというと、あらゆる状態の風と天候の下で数多く行なった練習の量とそれによって得られた経験なのです。
上昇気流というのは無風、霧(もや)、どんより曇った日、早朝とか夕暮の露時のような暖気がないときでも発生します。
暖かい原っぱから水分(湿気)が蒸発し、冷たい空気の上へ出るので、これが意外によく浮く飛行状態を作り出します。このようなとき、舗装地域(舗装道路とか泥土、石の出ている場所)はいつも冷たく乾いているので、ここからの上昇気流は弱いのです。これは、このような場所から強い上昇気流が発生する陽のあたる日中とちょうど正反対になっています。したがって、サーマルのない状態のとき、長く飛ばしたかったら草深い場所の上へ投げ上げてみて下さい。
     
全体的におだやか(無風)でサーマルの発達がゆっくりのときの最適調整は、風が時々吹きサーマルの発生が活発で部分的な場合とは異なります。おだやかなときに良く飛ばすためには、スタブ・ティルトと垂直尾翼の曲げを減らしてグライドの旋回?を大きくします。おだやかな時のサーマルを広々とした範囲の中で見つけたり、とらえたりするのはなかなか困難ですが、旋回?が大きければそれにぶつかるチャンスも多くなるわけです。もし、HLGがサーマルに入ると対気速度が増すため、旋回が当然きつくなるでしょう。
サーマルがなくても旋回?が大きいと云うことは、(機体の)沈下速度を小にするため、飛行時間が長くなる有利さがあります。
旋回?を大きくするとき多分、旋回内側主翼のウォッシュ・インを少し減らす必要があるでしょう。
無風時の性能を良くするためには、別の重要な調整方法の組合せがあります。一番目にノーズのおもりを僅か減らしてC.G.を少し後へ下げます。それから水平尾翼後縁を下へ僅か曲げてネガティブ・インシデンスを減らします。(*:つまり主翼との角差を減らすわけです。)こうすると上昇の頂点に達する前に(無風時)より高く上がることができるでしょう。その上、主翼が失速すれすれの滑空角で釣合っているので滑空性能も増します。
しかし、この調整をやり過ぎると"かえり"が悪くなるので注意して下さい。
風があって強いサーマルのある、つまり乱流状態のときは、無風時と反対の調整が必要です。風のあるときの強いサーマルは(その範囲は)小さく、どんどん通り過ぎて行きます。したがって、このような場合は小さいサーマルの中にとどまらせるために、無風時よりさらに旋回?を小さくすべきです。
旋回が充分でないと、サーマルをうまくつかまえられないかもしれないし、真直に飛んで行ってしまうとか、サーマルから外れてしまう(片側の主翼がサーマルにかかったような場合ははじき出される)かもしれません。
また、たとえサーマルに入ったとしても失速してしまうか、(サーマルから)追い出されてしまうかもしれません。
スタブ・ティルト、垂直尾翼の曲げ、あるいはその両方が特に少くて旋回がきつい場合は、旋回内側主翼のウォッシュ・インが常にもっと必要です。
〔*:ウォッシュ・インする前に胴の曲りを必ず調べて下さい。胴が何かの原因で旋回方向に曲っていることが割合多いのです〕
風のある強いサーマル時用の調整も(無風時と)同様に調整の組合せがあります。まづノーズに少しおもりを足してC.G.をさらに僅か前へ移します。それから、水平尾翼後縁の中央ブを僅か上へ曲げてネガティブ・インシデンスを増します。(*:つまり主翼との角差を増すわけです。また後縁の曲げは左右均等にやれるなら、中央部でなく翼端でも良いと思います)
乱流状の空気の流れは常に違う角度で主翼にあたります。したがって、C.G.の前への移動と水平尾翼ネガティブ・インシデンスの増加は、この空気の流れの変化での失速やダイブを起らせないようにするための前後の安定を非常に強くします。
無風時と乱気流時(風、サーマルのあるとき)の調整方法は全く正反対と考えてはいけません。C.G.の移動と尾翼の曲げはほんの僅かです。
それでもやはり条件によって2つの違った調整をすることを憶えておくのは大切なことです。あるエキスパート・フライヤーは調整変更の問題(わずらわしさ)を2機使って解決しました。勿論、1機は無風用、もう1機は風用です。貴方がずっとHLGを作ったり飛ばしたりしているなら、これと同じようなことをやて見たいと思うかもしれませんね。
それぞれ調整を変えた機体を用意しておくと、一々調整をどう変えようかと云うわずらわしさなしに上昇気流を捜すことに専念できます。

    無風で、
サーマルは大きく、
動きがゆっくりのとき
風があり、
サーマルは小さく、
動きが速いとき
旋回    大きく    小さく
ノーズのおもり     減     増
水平尾翼取付角     減     増
主翼ウォッシュイン          増


風のあるときの正しい投げ方について考えなければならないことがあります。
まづ最初に、あまり力一杯投げてはならないと云うことに多分きがつかれるでしょう。風のあるときは(同じ初速の投げなら)、無風時より風の速さの分だけHLGへの対気速度が増すため大きな揚力が発生します。
もし力一杯投げると、上昇パターンのコントロールがうまくいかないことに気がつかれるかもしれません。風のあるときは、いつ、どう云うふうに投げたら良いかと云うことに神経を使うべきで、力一杯投げるのはどうしたら良いのかを考えるのは得策ではありません。
もし、今、サーマルがあったとすると、それをつかまえるのは風が一寸弱くなったときが一番良く、無風になって暖かくなるときを当てにしてはいけません。
風のあるときのサーマルは、概して非常に小さく、風下への(空気の)流れと相談するよう速く移動します。投げようとするときは、暫くの間ときどきおだやかになる瞬間を気をつけて待ちましょう。
日中、風があるときはウィンド・スティックかストリーマーのポールを風上のなるべく遠くへ立てるようにして下さい。これは風の変化をキャッチし、それが近づく前に身がまえる余裕を与えてくれるでしょう。そして(今まで風の方向に横になびいていた)ストリーマーが一寸下ったその瞬間に投げます。
    

風のときは適当な旋回をするよう調整しなければいけません。つまり、投げのバンクで風下へ最初の旋回後、風に面して高度をまたかせぐよう充分旋回させる必要があります。
良くない旋回上昇で風下へノーズを向けて流れてしまうと、高度を損するし、ねらったサーマルからそれてしまうかもしれません。
反対に旋回とロールがない(少ない)上昇で風に真正面に向って投げた場合は対気速度が大きくなるため揚力が過大になって宙返りをしてしまいます。上昇角がきつい場合、突風などをうけるとその方向に投げ捨てられたようになり、大きな抵抗を生じます。
上昇時の旋回?が小さいと移動の速いサーマルを上昇途中でつかまえ易いでしょう。
   
風の方向に対する投げの方向は相互作用があって、いろいろな問題の原因となります。
上昇頂点でかえったときのノーズの風に対する角度(向き)は、投げる方向のほかに上昇中の旋回程度次第できまります。風のときの小さいサーマルをつかまえる投げのタイミングはきわめて微妙です。
もし、上昇頂点で、ノーズが風下へ真直むいてしまったら、サーマルより先に行ってしまうかもしれません。
反対に風に真正面に向ったら、すぐに旋回へ入れないで風に向ったまま暫くじっとしている(浮いている)か、失速に入るかしてサーマルに逃げられてしまうでしょう。したがって、上昇の頂点では、右か左かどちらかの側から風を受けているようにすべきでしょう。
もし旋回外側翼側に風を受けていれば、その側の揚力が増え、傾いて旋回にスムーズに入り易くなります。しかしフライヤー達の中には頂点で旋回内側翼が風を受けるようにするのを好む人も居ます。また、非常にきついスパイラル上昇をさせ、頂点でノーズがどちらを向こうが気にしない人達も居ます。
しかし、きついスパイラル上昇はパワー(POWER)を余計使う割には高度がとれません。しかしサーマルが弱く、その高さも低いときは、強く投げるとその上へ行ってしまい、これは全く損ですから、こんなときこそコーク・スクリュー上昇(CORK−SCREW−CLIMB:コルクの栓抜きのような形のスパイラル上昇)を試してみると良いでしょう。風の日に練習するときは、ウィンド・スティックで風向きを調べてから投げる向きを考えます。風向きに対し、右とか左または正面といろいろ違った角度で投げて見ましょう。同様にバンク角、投上げ角もいろいろ変えて見て下さい。上昇旋回の具合、頂点での"かえり方"、"かえり"からグライドへの入り方などをよく注意してください。もし、一緒に飛ばしている仲間が居るときは、彼に遠くから見て貰って、その飛び具合をよく聞いて下さい。少なくとも貴方が直接真下から見ているよりはよくわかる筈です。
風のときとかサーマルの弱いときの練習では沢山の感覚を働かせているようには見えないかもしれません。しかし飛ばすのは、いつも良い天気のときとは限りませんから、悪い条件のときにも良く飛ばすにはどうしたら良いのかを学ぶために(風のとき、サーマルの弱いときに)あえてチャレンジしてみるのは大切なことです。(*:こうして感覚を働かし経験をつむ練習をするわけです)
大部分のフライヤー達は、弱い風やサーマルのあるときはうまく飛ばします。しかし、悪い天気とか、サーマルを捜しにくいなどの条件の悪いときにうまく飛ばせる人はほんの僅かなのです。
                                                       ― 以上 ―
              


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