参照HP⇒
 http://www.vintageknowledge.co.uk/
 http://www.wpafb.af.mil/museum/






Metric/
Imperial

↑NASAの実験機X‐15のエンジン
 マッハ6.7の原動力は意外にコンパクト

 Internetの世界をウロウロしていると,時々面白いものに遭遇する.
 例えば,
“VintageKnowledge.co.uk”なるHP(→がそのロゴタイプ)があり,古いクルマのユーザーを対象にした情報が満載されている.部品の入手先から,車種別のメンテナンス法のヒント,資料の紹介など,至れり尽せりだ.そんな中に,妙なコーナーを発見した.
 Engineering Dataと銘打ったそのコーナーには,工具やワイアのサイズなどの細々としたデータに混じって,"Metric to Imperial Conversions"という項目が目についた.赤で,“new!”とある.
 開けて見ると,整然とした表組が並んでいる.夫々゛Distance゛,゛Area゛,゛Volume゛,゛Weight゛,
゛Power゛,゛Pressure゛のタイトルが付いていて,各々の“Metric/Imperial”の関係が示されている.古いクルマ,特に英国車のオーナーにはありがたい配慮と言える.恥ずかしながら,“Imperial”が所謂ポンド・ヤード法のことだということは,このページで始めて知った.それにしても,“Metric”の単純明快さに比べて,
“Imperial”の何と複雑怪奇なことか…と,しみじみ考えさせられた.
 ヒトが最初に考えついた計測単位は,言うまでもなく自分の身体を基本にしたものだったに違いない.十進法は,何と言っても指の数が出発点になっているし,今でも魚釣りで使う尋(ヒロ…両手を一杯に伸ばした長さで,身長にほぼ等しい)や矢引(ヤビキ…尋の約半分で,弓を一杯に引いた長さ)は,その代表と言える.(右図参照)
 問題は,尺とftを幾つに分けて,小さな単位を作るかだ.尺は,十等分して寸(スン=30,3mm),ftは12に分けてinch(in…インチ,吋=25,4mm)とした.ここまでは,まあ似たような感覚と言える.12進法というのも,慣れが解決してくれるだろう.
 寸やインチは,多分木工や石工が中心だった時代までは十分役目を果たしていたが,産業革命以降は不都合が生じたようだ.時代的な関連が良く分らないが,Metricという単位を発明してくれた仏蘭西人には感謝しなくてはならない.mm
(ミリメートル)という単位は,工業の発展に威力を発揮したに違いないからだ.
 話を元に戻すが,Imperialの国では精密工業の進展に当ってどうしたか?というと,盛大に分数を導入したらしい.身近(でもないか?)な例をあげると,自転車のスポークは13〜16番で太さを現す.これは,インチを13から16で割ったサイズの事で,針金やワイアも同様に表示される(現在はmm表示で売られているかも知れない).これは自転車に限った話ではなく,英国の流れを汲む工業製品に多く見られる習慣だ.慣れれば…と言ってしまえばそれまでだが,十進法の方がはるかに分りやすいのは確かだ.
 例えばこれも自転車の例だが,知人が手に入れた米国製のフレームに使われていたボルト用のヘキサゴンレンチ・サイズが中々判らなかった.色々と試した結果,最終的には7/32inである事が判明したのだが,5,55625mmのレンチなど誰も持っている筈もない.結局,航空会社の整備士をしている知人が仕事場からかっぱらって来た物で,やっと何とかなった.Metricでは,5,5mmというサイズは必然性が乏しい為か一般的には見当たらない(3mm以上はmm刻み)
 少々極端な考え方だが,インチで考えるかセンチで考えるかによって,モノに対する発想が違ってくるのではないかと思う.特に子供の場合,後者の方がよりこまやかな発想が出来るのではないか?と思うのだが如何.戦後の日本工業界の発展は,積極的にMetricを取り入れた事も要因だったのではなかろうか?
 現に,米国に進出したクルマ企業が現地で部品調達をするに当って,地元企業の提示した精度には呆れ果てた…という話は当のメーカーの人たちから直接聞いた.これは,あくまでインチにこだわり,分数式単位にこだわったが故の弊害ではないだろうか?自動車に限らず,例えば模型の世界等でも似たような経験はある.もっとも,世界的に有名な工具は米国製も多いのだが,これはあくまで例外と考えるべきだろう.
 Metricを発明?した仏蘭西の工業製品はどうかと言うと,さすがは芸術の国だけあってデザインは素晴らしいモノが多い.ただしあの国の人々は,自分達が世界の中心だ!と思っているフシがあって,例えばインチ(25、4mm)サイズが一般的なモノを,25mmにしてしまったりする.
 これも自転車の例だが,
Peugeotのお酒落なミニサイクルを買うと,あらゆる部分がMetricなので国産パーツが全く使えず,ガクゼンとする.幸い日本人は,インチ⇒25,4mmとして適度に丸め(ツジツマを合わせる事)て,互換性を持たせる程度の謙虚さを持っている.
 ところで,最近のお子様達の『ぶきっちょ』ぶりを見ていると,この国が今後も工業国としてやっていけるかどうか,かなり心許無い気分になる.もちろん,農業国としてはもっと別な器用さを要求されるから,そちらに方向転換するのはさらに困難で期待薄だろう,とも思う.
 この事態から脱却する方法は,ひとつしかない.ガキどもの生活から,便利なモノを極力取り上げてしまうしか無い!…便利さは,老いていく大人達の為にだけ意味があると思うのだが,如何.       (stupidcat)
【蛇の足】
 …20世紀最後のイベントになるはずだったNASAの探査機が,目的地の火星に接近する段階でトラブルを起した.原因は,なんと企画したNASAと製造メーカーの間で使用していた“単位”が違っていたためだった!!コトほど左様に,“単位”とはやっかいなものなのだ.ちなみに,製造側のメーカーでは国際単位の「ニュートン」を採用していたが,NASAでは「ヤード・ポンド(Imperial)」だったという話だ.嗚呼…!



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