“bone shaker”
 バードウォッチングなどという酒落たことではないのだけれど,公園で野鳥を観察するのが日課だった時期がある.
 公園としては妙な所で,面積の七割ほどがコンクリートで固められている.隣が大きな消防署で,何かあったら防災拠点として使う為らしい.
 そんなワケで,自転車でやって来る子供や通りかかる人が多い.周辺は30年程前に開発された埋立地で,坂は無いし道は車道・歩道とも整備されているから,自転車が大活躍している.2年ばかり坂の多い街で暮らしたのだが,自転車がホコリだらけなのを見てかわいそうになった.急な坂に囲まれ,狭くて交通量の多い道路しかないと,子供と自転車の行動半径は狭くなる.
 その点,この公園一帯に住む子供は幸せだ.犬達も同様で,飼い主も平坦だから気楽に散歩してくれる.最近では,飼い主の高齢化も深刻なのだ.

           
  ■ボーン・シェイカー
   A,ボーンbone⇒骨,骨格,象牙製品etc
   B,シェイカーshaker⇒カクテル作り用容器

   A+B=骨のカクテル?…否,ごく初期の自転車
                  ↓
                 理由
                  ↓
   答⇒あまりにも乗り心地が悪く,乗った後で
     は骨が粉々になる!!』というワケでこの
     名がついた…という説がある.
     真偽の程は不明.

          
 子供の頃から大好きだった事もあって,人の自転車も気になって仕方がない.キーキー,キュッキュッ,ギーコギーコ…といった音を立てているのを見る(聞く)と,全身の毛が逆立ってくる.自転車はもちろんだが,機械は総じて余計な音が即エネルギーの無駄遣いを証明している.パワーが(極端に)限られている自転車では,ちょっとした異音でも想像以上のロスなのだ.
 人間は,負荷が1/7以上変化すると感知できるという.一般的なマウンテンバイクのギア・レシオが,かなりワイドな設定になっているのはその為で,ベテランが使うようなクロスレシオでは,ビギナーは戸惑ってしまうだけだ(…が,一般的なMTBのギア・レシオはワイド過ぎて,いささか非現実的だと思う)
 前述の異音は,
(計測したワケではないが)恐らく1/7前後の気付きにくい負荷の変化と想像できる.ただし,2カ所以上から異音のしている場合も多く,トラブルは徐々に進行するから,当人は気が付かない事が多い.だから,相当『重た〜い!』状態で乗っている可能性は結構高いのだ.
 試しに,身近にいる自称マニア(オタク)が乗っている自転車と,今貴方が乗っているのとを乗り比べるのが一番手っ取り早い.@気持ちの良い速度まで加速する為の労力,Aその時の速度,Bそして足を止めてからどれくらいの距離を惰性で走ってくれるか?この3点をチェックすれば,自転車が本来どれほど軽快に走るか!?…にショックを受けるかもしれない.特にB番目は,差が顕著な場合が多い.前後輪の中心が左右に1mmズレていると,満タンの一斗缶(古い!)を積んで走るのと同じ,という話もある.現実には,このズレが1mm以下に収まっている自転車は少ない.
 あまり知られていないが,普通の自転車は最終組立てを小売店が行う.だからカタログで同じモデルを選んでも,店によって出来が違う.
 特にスポーツ車は,知識とセンスでまるっきり違うモノになってしまう.高価な自転車を買う時は,店選びが肝要だ.普通の自転車も同じで,たとえ量販店の廉価車でも最終セッティングは店自身か,その直前の段階で行う.
 実は,以前何年間か卸問屋で小売店向けの自転車を組み立てていた.出来る範囲で真面目な仕事はしていたつもりだったのだが,ちょっとしたトラブルを経験した.
 DIY店に納めている営業担当者が,納品した自転車にクレームが付いたと言う.ワケを尋ねると,チェーンの張り具合
(テンション)が強過ぎて,クランクの回転がスムーズでないというのだ.自転車のチェーンは細かい部品の集合体(400コ程度!)で,当然「初期伸び」という現象を見越して強めに張っておく.特に廉価車では伸び率が大きいから,わざわざ強めに調整していたのだが,買いに来る客が嫌うのだという.
 チェーンは伸びるモノだからと説明して売るべきだ,と言ったのだがラチがあかない.結局妥協して,ある程度弱めに張る事にした.だが,一カ月もするとダラーンとチェーンの伸びたヤツがあちこち走っていたのではないかと思うと,今でも寝覚めが悪い.体重が100kgもありそうな,でっかい高校生も乗る自転車なのだ.伸びすぎたチェーンは効率も落ちるし,危険なトラブルの元因になる.
 こんな事を思い出したのは,最近も続いている大企業の不祥事がきっかけだった.零細な卸問屋でさえ,エンドユーザーの為より目先の都合を優先してしまう.大企業ならユーザーは勿論,自らの組織の末端だって見えなくなってしまうのは当前かもしれない.件の公園で時々話をする御老体が,しみじみ「日本人はこんな事件を起こす人種じゃなかった筈なんですけどねぇ…」と呟いた.現在の繁栄を懸命に築いてくれた世代の言葉だけに,心に重くのしかかる.
 一番下っ端でさえ自分の仕事に責任と誇りを持って働く…のが,日本人の特質だった筈なのだが,最近は違ってきたらしい.毎日のように子供達が口にするものを造っている,という自覚が欠落した食品工場なんて,想像しただけで身の毛がよだつ.
 最近の廉価な自転車市場は,近隣諸国からの輸入品が激増している.(悪口になってしまうが)某途上国の一部の製品は,どう組んでも仕上がりに責任が持てない気がして,仕事を辞めてしまった.「心がこもっていない」が,辞める時の言い訳だった.生意気と言われるだろうが,手がけた仕事の結果で他人を傷つけたくない…というのがモノ作りの第一歩だと思うのだが,如何?.                                          (stupidcat)
【蛇の足】
 急速な市場経済化が進む某国の製品は、急テンポで改善されつつあるのも確かで、必ずしも国民性云々の問題ではないようだ。現に同じ国民が暮らす島国の方では、あっという間に先進国並みの製品が作られるようになった。世界の自転車部品市場は、この国(地域?)の製品が支配している。別の某途上国でドイツの高級乗用車が造られている例もあり、製造者の意図をどれほど徹底するかがポイントだろう。歴史的背景を理由に(?)、ハッキリとものが言えない我々側の体質の方が問題なのかもしれない。…気合が抜けてしまうと、単簡に“禄でもないモノ”ができあがってくる。



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