”ランチャーズ”会報・2000−4

* 4月ランチャーズ記録会は9日(日)は大宮田んぼ(夏前の最終)です!
 早いもので夏前の大宮田んぼは10日過ぎには水が入りますので今月で終わりです。今後しばらくはFFも場所を探してジプシーです。ランチャーズ記録会は5,6,7月は瀬谷、8月はグリーンパーク(ちび太号大会)の予定です。但し、パチンコは選手の都合もあって全てグリーンパークの予定です。大型機は早朝の大宮田んぼ隣の運動場(午前9時まで担当田岡氏?)と茨城の櫻川(担当金川氏?)、その他に分散です。

* ランチャーズ・サロン1.HLGの性能は上がったのか その2
 3月記録会を観察しての記録向上の秘密を暴く?
@ ピッギーバックが上手くなったのは事実です。これはFFにとっては大変重要なことで世界選で残るのには必須の技術ですが、日本選手にはその認識が薄い。競技としては清くないと見える様ですが、これは間違いです。又、急にやろうとしても出来ないのです。その為にこりずに続けるHLG記録会があるのですが。話題を戻してピッギーバックだけで、これほどの好成績が出せるか、やはり否です。
A 今回フライオフをじっくり見ていて感じたのは、低翼面加重の有利さでしょう。
フライオフでの飛び方を見ていると、サーマルに乗るかそるかの微妙な所では軽いHLGが断然有利に見えます。かってのHLGは10〜12gの翼面加重でしたが、現在は7〜9gと20〜30%も軽くなっているのです。これほどデータを改善できるのはHLGの規制がほとんど無いからで、他の機種では不可能です。
 ウエークの翼面加重は14gで、これから見ると35%も違うのですから、大型化と相まってR数の条件差を入れても沈下率では差が縮まっていると思います。沈下率は40cm/秒を切っていると感じますが。でないと計算が合わないのです。     



「プロペラとゴムの話」−9         石井英夫

 ブレード断面とレイノルズ数問題
 プロペラ効率問題は、結局はブレード翼素の揚抗比問題に帰することを”翼素理論”から知りました(第1表)。
簡単に言ってしまえば、どこの翼素でも揚抗比30以上もあれば、あと適正なピッチ分布を与えれば良いだけなので、プロペラ問題は一挙に片づいてしまいます。ところが、F1Bのレイノルズ数空域では、そんなわけにはいかないので、あれこれの工夫に悩まされることになるのです。
 F1Bのレイノルズ数空域は、これは昔芝地氏ともよく話し合ったことですが、大きさの違いにもかかわらず、ふしぎなことに主翼レイノルズ数とほとんど重なります。
 それでも昔とかなり違って、最近のF1B機の主翼はずいぶん細長くなって、主翼レイノルズ数のほうが低くなってしまいました。 主翼レイノルズ数は、標準的なスパン1,600ミリの機体ですと平均翼弦100ミリですから、速度を5m/秒とするとRv(レイノルズ数)35,000、スパン1800ミリのロングスパン機なら平均翼弦90ミリでRv31,500。これは平均翼弦の場合で、翼端60ミリならRv21,000、ここまでレイノルズ数を落としても、まだ縦横比効果が生きるということは、最近の翼型性能の進歩を物語っています。
 さて問題はプロペラのレイノルズ数で、こちらの方はどうか。
 1例に直径600ミリ、回転数10回/秒、飛行速度5m/秒、半径75%翼素のブレード幅40ミリ、先端20ミリのプロペラを想定して、このレイノルズ数を計算してみます。
 回転速度10回/秒と飛行速度5m/秒は、モーターラン中域どころを想定しています。
 この計算によると半径75%翼素Rv42,000、先端Rv27,000となって、これを見るかぎりでは、主翼の場合よりレイノルズ数にかなり好条件に恵まれていることがわかりました。
 さらに、発航直後の高速、高回転状況では、レイノルズ数は2倍程度には増加すると見込まれますが、反面、モーターラン末期には、回転速度もヨレヨレになって、レイノルズ数も落ち込みます。
 そこで問題を考えやすくするためのモデル計算として、@半径75%位置のレイノルズ数は、発航時84,000、平均値42,000、終盤32,000、A先端部のRv数は発航時54,000、平均27,000、終盤20,000と仮定します。 そうしてここが問題です。Rv数50,000〜20,000の空力領域では、空気の粘性が作用して、翼型特性は大幅に落ち込みます。
 この空域には、傾斜が急な崖のように特性がおちこむ、いわゆる”臨海現象”という魔物が潜んでいて、翼型にもよりますが、Rv50,000とRv20,000では、性能が倍ほども違う場合があります。
 翼型性能とレイノルズ数の関係問題は小生の得意領域ですが、ここでの深入りは長くなるので、乱暴のようですが簡単に要約してしまうと次のようになります。
 @Rv50,000以上では最新の翼型なら臨界現象から解放されて、特性的に非常にラク。このRv数以上なら、うまくすれば揚抗比30が望めるかと思います。微妙なのが、Rv数45,000からRv数25,000の間、ここが臨界現象のまっただ中ですから、わずかな翼断面の形状の違いが、モロに特性にひびきます。そうして、何をやっても絶望的なのがRv数25,000以下で、Rv数20,000では揚抗比15などは望むべくもありません。
 A”翼の薄いは七難かくす”といって、低レイノルズ数領域では、薄翼にする以外に、対策はありません。前エンを尖らす(いわゆる自然乱流翼)とか、ウエスト部分のくびれを強調するとか、ダマシのテクニックはいくつかありますが、根元的な対策はとにかく薄くすること。Rv25,000以下では5%より厚い翼は受けつけません。しかし、薄翼の効果にも限度があって、どんどん薄くしていけばいくらでも低いRv数空域に対応できるかというと、それはダメ。Rv数15,000以下ともなると、薄翼化もダメ、なにをやっても効果はなしという、異次元の世界になります。
 さて、以上のことを頭の片隅において、ブレード問題を考えると、結局は選択の問題だとわかります。選択の問題とは、@ブレード翼素のどの部分を重視するのか、Aモーターランのどの部分に重点を置くか、です。選択のちがいがセンスの違いと前に書きましたが、ここでの選択の幅はかなりあるように思います。”F1Bプロペラに王道なし”で、やってみての様子で決めるしかないと考えます。

 HLG翼の優秀性
 ブレード断面問題に関して、有用なヒントを2つ紹介します。ひとつはレイノルズ数的な近似から、優秀な主翼断面なら、そのままプロペラブレード断面に転用できることです。
 小生はプロペラ専用の別種翼型が存在するなどとは、考えることができません。
 主翼に用いて優秀なら、プロペラに用いても必ず優秀と信じています。小生はプロペラ専用の別種翼型が存在するなどとは考えことができません。
 主翼に用いて優秀なら、プロペラに用いて必ず優秀だと信じています。プロペラブレード断面の揚抗比は見当がつきませんが、主翼断面の揚抗比なら、手投げ滑空その他の観察で容易に確かめることができます。
 ブレード断面でもうひとつのヒントが、いわゆるHLG(ハンドランチグライダー)翼型の活用です。HLGの専門紙「ランチャーズ」への寄稿だからいうのではありませんが、下面が平らで工作容易なHLG翼型がF1Bプロペラに活用できることを、ここで言いたいのです。HLG翼型は、もともとRv数30,000以下の低レイノルズ数専用翼型ですが、カンバー翼にくらべて、低揚力、低抵抗タイプなので、翼面加重に制約のある競技機の主翼には嫌われて、活用されていません。
 しかし揚抗比的には、カンバー翼型に勝るとも劣らない優秀な翼型です。低揚力タイプですから、同一ブレード面積ではカンバー翼より推力が劣るのは当然ですが、これは直径の伸長なりブレード幅の増大で、容易に補いのつくことで、これはむしろプラス要因と考えられるところです。
 唯一の気がりが、高負荷運転時の過大流入角特性ですが、もともとが大仰角:滑空得意のグライダー翼型ですから、支障とするには当たらないでしょう。HLG機のレイノルズ数は、大型の「ゴールドラッシュ」機あたりで平均値がRv27,000ぐらいですが、縦横比7ぐらいの翼なのに、滑空比10に近い好性能ぶりを示します。F1Bプロペラに活用した場合に、これより大きいRv数で、しかも縦横比無限大の2次元翼特性なら揚抗比20以上が期待できそうで、何より作りやすいのが魅力です。ただHLG翼型は前エン近辺丸みの与え方が微妙で、この局面のわずかな差が意外な性能差につながります。
 HLG翼型ブレードのプロペ製作なら、小生には豊富にあります。小型機のほうから、1/2クープ級(ミニクープ)、クープ級、R級あたり、カンバータイプとほとんど性能差を認めません。F1Bプロペラでは、むかし”へらぶなプロペラ”のメインはHLG翼型でした。その後もときたまHLG翼型を試みていますが、印象は変わりません。 実験してみてふしぎなのは、下面フラットなHLG翼型と、下面にかなり深いえぐりの深い(5〜6%)を要求するカンバー翼型とでは、飛ばしてほとんど性能差が見られないことです。上昇時の高負荷運転では、両方の揚抗比にほとんど差はないのだと推察しています。            

    おわりに
  いろいろ書きましたが、これで多年の懸案を果たせたことで、ひとまずホッとしています。まだ、書き残したことが多くあり、材料のこと、工作のこと、プロペラが変われば変わる調整法のこと(たとえばプロペラ直径が変わればスラストが変わる)など、実技上の細かなノウハウについては、冗長を恐れてすべて割愛してしまいました。
 テーマを原理上のこと(プロペラ効率1点)にしぼりたかったからです。また、最新ののF1B競技事情に情報を欠き、競技現場の生きた空気を伝えられなかったのは残念ですが、これは現役を離れた筆者の立場上、やむをえないことでした。 具体的にな設計図面のことですが、小生にも現役時代の設計図面なら数多くあります。
 しかし、いずれもTANゴム40グラム時代の年代もののこととて、最初は例示を考えていたのですが、いかにも旬外れと考え直して止めました。 自分で競技は出来ませんが、いまのゴム事情に合わせて新しく設計するとすれば、ゴム条数26条、巻き数500回、直径580〜600ミリの細身タイプの固定ピッチで、100m以上の上昇を狙って企画するだろうと思います。 文中ほんのちょっぴりですが、素人の分際で学者の領域に踏み込んでみることにしました。模型のことなど研究しても世の中のタメにならないと思ってか、学者は手を伸ばしてくれないからです。素人のナマイキも、この程度なら許されると思いました。

 ”F1Bプロペラに王道なし””レイノルズ数25,000を切って優良翼型なし”などと、いささか過激な断定口調も試みました。持論の強調という狙いもありますが、これには非常に数多くの失敗体験が背景にあります。
 世の中成功談義にことかきませんが、失敗は隠したいのが人情で、こちらはほとんど語られることがありません。小生もしていないので大きなことはいえませんが、実技者には自分のでも他人のでも失敗体験こそ貴重で、これこれのことを狙ってこうやって、結果こういうぐあいに失敗したと、データつきの失敗体験をまとめて本を作ったら、さぞかし技術情報の宝庫になるだろうと考えます。 文中にも書きましたが、プロペラ専門書の難解さに往生させられた経験があるので、読みやすいこと、わかりやすいことを専一に心掛けました。これでもわかりにくいといわれれば、ひとえに筆者の力不足です。筆者の思い違いその他の不備な点がありましたら、ご叱正をいただきたく思います。 

 2000年ランチャーズ・HLG・3月記録会報告

 4ヶ月連続のフライオフとなりました。特にこの日は異常で5連続maxが2人、4連続maxも2人出て初っぱなからビッグな日になりそうな予感。
 結局6人のフライオフになり、F1の90秒は4人が通過、F2の120秒も又も4人が合格、遂に180秒のF3となりました。これを制したのは久しぶりに登場の富谷選手で、痛んだHLGながら滑空と安定抜群さで久しぶりの優勝、しかし機体は回収できず、ぼろぼろだったから新しく作りましょう。
 2位は田久保選手、この日はV尾翼の飛行機が誠に良く飛びました。3位はこのところ好調の大八木選手、しかし前回の様には行かず、これは飛行機に難ありか。4位はこのところ成長著しい小川選手、華奢な身体の割にパワーがあるし飛行機の出来が良い。5位吉敷選手、いざと言うところでカッカしないところがこれからの改良点。6位は前回も良いところまで行きながらビシッと来ない平岩選手。
 7位は吉田選手、高度は素晴らしいがどうもウンに恵まれていない。遅れて登場の斉藤選手は今回はオフに残れず8位。ここでやっと登場の関沢選手、高度は十分だが、サーマルが近寄らない感じで9位、10位は新潟から特別参加の長井選手、飛行機も素晴らしく立派な成績です。11位の久保選手は今回は大型の調子が良くないか。
 井村選手と加藤選手は遅く登場した為か12位を二人で仲良く分けた。14位はこれも新潟からの特別参加の細海さん、新潟は旋回が大きいが飛行機は合格、成績も上級クラスです。15位は今月で大学引退(卒業ではない)で嬉しがっている古矢さん、この日は調子が出なかったようです。16位は飛行機は問題ないがサーマルに嫌われた城田さん。
 17位は折りたたみ翼の石井君、飛ばすたびにみんなが歓声を上げるも、開きのタイミングが合わず成績は振るわず。ラストは40肩の平尾でした。

  HLG・3月 60秒MAX10投中5投  2000年3月19日 大宮田んぼ・曇り晴れ・9〜12時・風1〜3m 

NO氏 名10F1F2F3合 計
富 谷606060606056 - - - -90120180570
田久保606060606057 - - - -9012048438
大八木606059416060415060 -9012045435
小 川606060602960 - - - -9012040430
吉 敷606060605360 - - - -64 - -364
平 岩3654606060246060 - -33 - -333
吉 田60426058493960514630 - - -289
斉 藤29164222602760471460 - - -269
関 沢25571140386060604739 - - -265
10長 井3260345860 627 75113 - - -263
11久 保23506024383733266033 - - -245
12加 藤27605528553627273319 - - -239
12井 村39413326602330422358 - - -239
14細 海40414944 2602514 - - -234
15古 矢16 51823602333602328 - - -204
16城 田42 81142302730 63625 - - -180
17石井満 533 712 7 6 - - - - - - 65
18平 尾281316 - - - - - - - - - -57


 2000年ランチャーズ・PLG・3記録会報告 

 この日のパチンコは盛会で9名の参加、近年まれな人数でした。
 久しぶりの石井先生の参加の効果かどうか解りませんが、全体に好成績(最下位でも200秒)で先生が優勝。2位はこのところ好調の番場さん、3位は地味ながらチャクチャクと音のする斉藤さん、4位は初参加?の倉田さん、石井流とはひと味違う昔のPLG、ヒラヒラと飛んで、たまにストンと落ちるタイプ。5位は悠々自適の感じの佐藤さん。
 6位は石井流の正当派直線上昇の内山さん、この日はサーマルに嫌われた。7位は春と共に田んぼに顔を出し始めた加藤さん、8位はこのところ熱心な乙川さん、9位はずっと低空飛行の西原さん、10位ながら200秒は立派吉田さんでした。
 久しぶりにPLGを見ると、桜の花の様にはかない飛行機ですね。その点HLGは花が長持ちするランでしょうか。瞬間が狙えるのでサーマル探知にはPLGで良いのかな。

   PLG・3月 60秒MAX10投中5投  2000年3月19日 大宮田んぼ・曇り晴れ・9〜12時・風1〜3m 

NO 氏 名 1R 10 F1 F2 合 計
石井英 42 60 58 60 60 60 36 29 48 46  -  - 298
番 場 45 60 60 60 32 60 25 37 20 54  -  - 294
斉 藤 60 52 60 50 23 42 60 60 46 48  -  - 292
倉 田 38 31 60 37 60 33 60 12 18 60  -  - 278
佐 藤 43 52 60 60 38 33 51 41 38 22  -  - 266
内 山 18 60 60 21 19 37 28 47 36 30  -  - 240
加 藤 47 46 43 37 34 40 30 17 42 52  -  - 230
乙 川 37 44  8 11  8 47 41 29 18 60  -  - 229
西 原 38 22 25 50 26 40 34 42 20 36  -  - 206
10 吉 田 26 19 19 28 43 13 60 27 32 37  -  - 200