”ランチャーズ”会報・2000−3

* 3月ランチャーズ記録会は19日(日)は大宮田んぼです!      

 はや3月、FFも本格化して選手は競技会を追って転戦する季節になりました。寒いのは筋肉のみならずゴムにも良くない。筋肉はホカロンなど使えますがゴムはヒーター禁止ですので、世界選対策の練習は暖かくなってからの方が良い。しかしトシヨリの筋肉対策は、朝早はのんびりして、気温も暖かくなって、身体がほぐれてくる午前10時頃からHLG競技開始が望ましい?

* ランチャーズ・サロン

1.お休み中のみなさまへ

 FFモデラーには、田んぼに通いつめるタイプと、ポツンポツンと出てくる人、また、しばらく休んでポコンポコンと出てくる人等があります。ですから、1〜2年は来なくても根気よく

”ランチャーズ”を送り続けるのですが(たまにはめげそうになりながら)、反応が無いと寂しいものです。たまには近況をレポートにして(雑で結構です)ご連絡下さい。

2.HLGの性能は上がったのか

 60秒MAXでやると、最近では6,7回で300秒が出て、下手をすると4,5人のフライオフになります。これは昔とどこが変わったのか。投げ手は古参組(古矢、石井、久保等20年前と同じメンバー)、中堅(関沢、吉田等)と比較的新しいグループに別れますが、高度が上がったりサーマル読みが極端に変化しているわけではありません。では機体か?

 確かに機体は良くなっています。大型化と翼面加重の減少は顕著です。もともと45秒は飛んでいたHLGですから、これが10秒延びて55秒になると60秒は簡単なのか、ここが臨界点でガクっと成績がよくなるのか?そこが解らない。

 日本の豊かさがHLGにも影響して、費用さえ出せば良い材料(良いバルサ、カーボン胴)が簡単に入手出来る。その結果として低翼面加重になった事に負うところも大きいのですが、大型化がこれと平行して進み、滞空性能が20%程度アップし高性能になったことは事実でしょう。

 アメリカではHLGは薪の一種で、束ねて持ってくるようですが、日本では工芸品の一種で技術の粋を注ぎ込んで作り上げるのですから飛ぶのも当たり前。

 いもり選手は50才以上(頭が薄いが中身は濃いか?)吉田選手も同様、その他の選手を若年と

いうべきかどうか解りませんが、それほど強パワーとは言えません。しかしゴルドラッシュが出てきてから、様変わりしたことは確かでしょう。しかしです。ゴールドラッシュのみではこれほどではなかったと思います。ある日突然として、イモリ機を筆頭に各選手のオリジナル機が全部飛ぶようになった気もします(念力か)。この謎を解くべく、検証に時間をかけてみましょう。



              「プロペラとゴムの話」−8          
石井英夫  

               プロペラ直径の問題

 プロペラ問題がまたやっかいな問題です。プロペラ回転には直径の影響がいちばん大きく、所要トルクが直径の5乗にも比例するという影響力の大きさですから、ゴム条数にさほど融通のきかないF1B機にとっては、プロペラ直径問題にほとんど選択の余地はない、と言ってしまって差し支えないようにも思えます。所要トルク(パワーも同じ)が直径の5乗ということは、直径2倍のプロペラを等速で回すには32倍のトルク、直径10%増しなら、所要トルク1.61倍という計算になります。しかし、それはわかっていても直径増大にユメを託したい。そう考えて直径を大きくするとどうゆうことが起こるのかと、以下に検証したいと考えます。ついでに直径を縮めた場合についてもです。

 直径増大にともなう諸問題

(1)プロペラディスクの面積の増大ですから(運動量理論)、これは間違いなくプロペラ効率の向上につながります。

(2)プロペラ直径5%増しは所要トルク1.27倍、10%増しなら1.61倍です。ゴム条数増しが必要で、ゴム巻き数減が必然、さらにエネルギー蓄積効率減をまねきます。

(3)推力が増すので、回転速度を落とすことが可能です。したがってゴム巻き数が減っても、ただちにモーターランの減少とはなりません。

(4)同じゴム条数(すなわち同じゴムトルク)にこだわって、大径プロペラを回す手段に、
    (a)プロペラピッチを落とす
    (b)ブレード幅をせばめる、2方法があります。

  (a)はそのこと自体でマエナス要素で効率的に不可、(b)の細身のプロペラには、レイノルズ数の減少というマイナス要素がありますが、ブレード断面問題(すなわち揚抗比のこと)さえ解決すれば、大いに可能性があります。。

 以上の検討により、直径増大策が成功するかどうかは、細身のプロペラが成功し得るか否かにかかっていると考えます。最近のF1B主翼が信じがたいほど細長く伸びている(有力な低レイノルズ数翼型を発見したため)現状を見ても、F1Bプロペラは将来に向かってまだ細長くなるものと、小生は推定しています。

 直径を小さくするとどうなる?

(1)直径の減少はそのこと自体が効率の低下要因。ある直径以下では急激に効率の低下が起こると考えます。

(2)ゴム条数が少なくてすむのはプラス要因 

(3)ゴム巻き数が増大するので、プロペラ回転速度を速くできます。これはレイノルズ数増加につながってプラス要因

(4)プロペ回転速度が増すぶん、ピッチを落さないといけないのがマイナス要因

 以上を要するに、プロペラ直径問題というのは、プラス要因とマイナス要因の複雑微妙なせめぎあいで、長短どちら方向へ動こうにも、ウカツに動けないのが実状と考えます。しかし、プラス要因、マイナス要因といってもこれは理屈上のことで、現実にはその程度が問題ですから、結局はどちらの影響が大きいのかソロバン勘定になります。

 現行F1Bプロペラの主流は直径600ミリで、これはまことに妥当なセンと考えられ、とくにここから動かす理由は思いつきません。しかし、敢えて通例に逆らってみたいというのであれば、上限650ミリ、下限550ミリぐらいまで験してみる価値はありそうに思えます。それをやって性能向上がはたせるかどうかはわかりませんが、マイナス要因への対策を誤らなければ、そこそこに成立し得る筈と考えます。F1Bプロペラはどんなことをやってもぢょぼちょぼ、”F1Bプロペに王道なし”とする理由です。

 ここでひとつ、プロペラ直径問題で異端的な技術のことを思いついたので書き添えておきます。

 それはプロペラブレードを1翅にしてしまう方法です。一翅プロペラであれば、同じゴムトルクで直径を1.15倍まで伸ばすことができるので、効率アップに悩むF1Bプロペラには福音となりますが、これが果たして実用になるものかどうか。小生もある時期に思い立って実験したことがありますが、機首のブレがひどくて、どうにも実用になりませんでした。一翅ペラ方式は、エンジン機のように高速回転で推力に比べて遠心力の大きな回転方式にはむいていますが高推力、低遠心力タイプのF1Bプロペラでは、どうにもダイナミック・バランスがとり切れないように思います。それとも何か対策があるでしょうか。

               プロペラピッチの問題

 プロペラピッチの問題については、考えるべき要素が2つあります。(1)ピッチ分布と(2)ピッチ直径比です。

 (1)ピッチ分布については正直に告白しますが、小生いまだに定見を持つに至っていません。 これだ、というピッチ分布図を示すことができないということです。理論的に考えるなら、飛行速度とプロペラ回転数がわかれば、プロペラ1回転に進む距離、すなわちプロペラピッチは計算できます。また、最高効率時のスリップ率は30%ぐらいとものの本にありますから、30%加算すればプロペラピッチは決まります。しかしそれからがむつかしい。むずかしい理由は、プロペラ各翼素ごとの、現実の流入角(主翼の場合なら迎角)がわからないので、ピッチ分布が決められない、ということです。主翼の場合は、普通の翼型なら、迎角5°ぐらいが最大揚抗比迎角というのが常識ですが、全機重量がブラ下がる高負荷運転では、流入角はどうなるのか。ピッチ分布図が直線に近い等ピッチプロペラ(へらぶなタイプがこれ)がよいのか、主要翼素に大きな流入角を与える円弧型のピツチ分布が良いのか。いろいろ験して、石井流儀と言う形はできてはいるものの、これだ、という感触はまだ掴んでいません。ここが突破できると石井流儀のプロペラももうひと皮むけるのですが、現状はこの段階なので、これ以上の言及は控えることにします。

(2)ピッチ直径比問題

 これは考え方はひとつしかなく、要するに、ピッチ直径比を落とさずに、どうやって上昇を行わせ得るかの問題です。第1表の翼素理論から考えて、先端ブレード角は20°を切りたくないが、これで上昇がうまく行くかというと、これがムチャクチャにむずかしい。先端がブレード角20°ならピッチ比1.14,15°なら0.84です。現実には先端ピッチを1.0ぐらいにとどめて、あとは高揚力比断面を探すことになろうかと思われますが、プロペラ効率問題を考えるとき、ここがいちばんの難所です。

 可変ピッチプロペラがあるではないか、といわれるかも知れませんが、可変ピッチプロペラは発航初期の過剰パワー対策用で、翼素効果を改善する働きはありません。F1B機の発航時、垂直上昇でもまだパワーが余り過ぎている場合には、過剰トルクを引き延ばして長く使える可変ピッチプロペラは、大へんに威力があります。しかし、実機もそうですが、可変ピッチプロペラには致命的な欠陥があります。それはブレードが剛体であるために、翼角を動かした場合にある一定角以外には合理的なピッチ分布を描けずに−−−ピッチ分布図を画いてみればわかりますが−−−先端部分の翼角が過剰に変化してしまうことです。そうはいっても発航時の爆発的なパワー(ここにゴムエネルギーの大量部分が集中していることは、ゴム特性図からあきらか)を有効利用できることは可変ピッチプロペラの魅力で、この点は威張られても仕方のないところです。

 これは小生のかねてからの持論ですが、ゴム動力のようなジャジャ馬パワーへの合理的な対応は、可変ダイヤプロペラしかないと考えます。これならピッチ角をヒネッたりすることなく、何パーセントかのプロペラ径の伸び縮みだけで、ムリなくパワー変化に対応できます。

 どんなメカで、といわれると困りますが、F1Bプロペラのさらなる効率の向上には、この方法しかないのではないでしょうか。

 固定ピッチプロペラが、パワー変化に融通のきかないガンコ者のようにみうけますが、内実は存外なお利口者なので、少しだけ固定ピッチプロペラを弁護しておきます。固定ピッチプロペラは、発航直後の爆発的なパワー時を除くと、モーターラン全域にわたって、案外にロスなくゴムエネルギーを上昇に結びつけているのです。

 その理由は(1)上昇中の機体の進行スピードがほぼ平均していて、極端な速度差がないこと。 かりに速度差があっても、プロペラ回転速度に対応する範囲であること。これが固定ピッチプロペラで、モーターランこのほぼ全域が間に合う理由になっています。

 (2)巧みに調整された機体はお利口者で、受け取ったパワー変化を速度変化にでなく上昇角変化に結びつけていることを、世間では調整と呼んでいます。

 しかしこのお利口者も、垂直上昇になってしまってはもうお手上げです。このあと如何にパワーを増強されても、いたずらに空転するばかりで、規定のピッチ以上には進めません。ここに可変ピッチプロペラの出番があるわけですが、この垂直上昇でもまだパワーが余ってしまう期間がどれ程か、というところが問題です。”シンプル イズ ベスト”とかいいますが、このあたりを見極めて問題の処理をシンプルなほうへシンプルなほうえと寄せて行くのも、技術センスの一つです。

 あちこち手詰まりで理想効率には遠いF1Bプロペラの現状では、固定ピッチに腰を据えて、プロペラ技術を磨いて行くという行き方も、あながちに捨てたものではないと考えます(以下次号)。

 
2000年ランチャーズ・HLG・2月記録会報告
            吉田利徳

3ヶ月連続のフライオフとなりました。7人のフライオフを制したのは大八木選手です。朝グリーンークに行ったら誰もいないので、大宮田んぼにきたら記録会のまっ最中でした。このところ、不況の為仕事がきつくなり、その上給料も下げられてしまった、それらを全部ハンドランチにぶったけての1位。2位は第1フライオフで愛機が視界没になり、2番機の調整が間に合わなかった井村選手、3位は大八木選手の迫力に圧倒されたか?加藤選手。

 大型機との格闘の末4位の久保選手、お疲れさまでした。久々のフライオフとなった斉藤選手は5位、6位はまだ本調子でない吉田、7位の平岩選手は機体が破損して予備のグライダーが無くボツ〈練習中運悪くトラクターに引かれて全滅〉、10秒落ちでフライオフに残れなかった吉敷選手は8位〈前回より5秒落ちたよ〉。9位関沢選手は年度末の為、今回は参加のみ。

 10位池田選手は水平尾翼に異変が発生するも、後半に復調し10投目に挑みましたが機体が破損してしまいました。11位は吉野さん、プレッシャーをかけてごめん。12位は小川選手、新作機の調整が間に合わず。13位城田選手前半上手くいってましたが後半スタミナ切れ? 

 今日は「ファントマ」が2機視界没となりました。平尾、古矢さん、ほぼ同時に発航した「ファントマ」は例の飛行パターン〈安定が良すぎる〉?で視界没。次回は両氏とも5機づつ持ってくると思います。宮辺選手は大型機をしごきまくっていましたが、不本意な結果となりました。

 追記:編集者の勝手でまたまた報告、迷機「ファントマ」が、身体がなれて、どうやら投げられるようになったら、又、また上空視界没。ものすごく安定がよい機体なのでサーマルにはいると外れず、見るみる見えなくなりました。しかしです、その日の夕方、川越から電話が入り機体が見つかりました。川越からの電話は私2回目です。1回は国内級グライダーが川越の町中の電柱に引っかかっていたのを、発見者が電話をくれたのです。今回はこれより大宮に近い古市場(約4Km)です。大宮の飛行機は川越方向に飛ぶようです。

  HLG・2月 60秒MAX10投中5投

  2000年2月27日 大宮田んぼ・晴れ・9時〜12時・風速2〜4m

NO

氏 名

10

F1 F2

合 計

大八木

42

60

30

18

60

52

60

13

60

60

90 60 88

539

井 村

27

60

60

35

60

34

60

52

60

90 60 48

498

加 藤

60

60

44

60

60

60

90 53

443

久 保

60

60

60

23

60

60

90 50

440

斉 藤

60

60

48

57

60

60

60

90 42

432

吉 田

60

60

60

57

50

60

60

90 31

421

平 岩

60

60

37

60

23

60

60

0

300

吉 敷

30

60

50

60

60

20

22

60

36

17

290

関 沢

26

60

60

53

48

41

60

27

49

56

289

10

池 田

34

29

38

50

42

60

52

60

60

 0

282

11

吉 野

27

40

60

25

27

60

23

54

42

24

256

12

小 川

23

24

 6

60

 4

36

48

28

36

60

240

13

城 田

31

27

53

13

60

60

 6

 7

27

32

236

14

古 矢

26

20

 4

30

23

60

41

19

60

 9

217

15

宮 辺

13

31

49

17

11

 5

16

21

60

48

209

15

平 尾

20

26

15

54

60

17

10

177

  

 2000年ランチャーズ・PLG・2記録会報告

パチンコも復活の兆しがあり、人数も安定してきました。

 PLGは番場さんが1位、2位は佐藤さん、久々の参加となった加藤さんは3位。西原さんはよく飛ぶ飛行機はみんな飛んでいってしまったのですか? 乙川さん次回も参加をお待ちしています。

 PLG・2月60秒MAX10投中5投

  2000年2月27日 大宮田んぼ・晴れ・9時〜12時・風速2〜4m

NO

氏 名

10

F1

合 計

番 場

38

58

17

 9

60

60

60

60

17

29

298

佐 藤

 7

37

50

37

52

44

34

60

52

33

258

加 藤

25

31

27

43

36

35

12

18

60

 3

205

西 原

19

23

26

 2

21

13

20

41

39

60

189

乙 川

36

10

37

 4

31

29

32

34

 8

170

 

DogEggGreen 2

 バードウォッチングなどという洒落た事ではないのだけれど、ある時期、池のある公園で野鳥を眺めるのが日課だった時期がある。最初は、60cm級のRCヨットを走らせるのが目的だった。
 春先から秋にかけては緩やかな南風の吹く日が多く、我がHottokeKobo製カップレーサーは世紀末のニュージーランドに思いを馳せ、タック&ジャイブを繰り返すのだった。そんな時、気が付くと以外に多くの野鳥が現れることに、正直驚かされたのだ。
 ところで、ヒコーキ屋から見て、最も関心させられ
る野鳥が燕ではないだろうか。池の表面にいるアメンボ等を狙って、池の端から端へと超低空飛行を繰り返す。
 凄いのは、その間ほとんど羽ばたかない事だ。勿論、コースの両端では盛大に羽ばたいて高度を稼ぐ訳で、その位置エネルギーを速度に換えて…とまあ、FF屋という厄介な人種は、ついそんな具合に考えてしまう(困ったものです)。
 また水面だけじゃなく、芝生の公園でも草の葉先すれすれの超低空飛行を見せる。
 草叢に潜む昆虫を捕らえているのだろう。

 彼らの飛びっぷりは、さながら巡航ミサイルだ。イラクやユーゴで、米軍はこのミサイルを盛大に乱射したようだから、メーカー某社は笑いが止まらなかったに違いない。以前、兵器関連のHPを覗いていたら、この種のミサイルの「お値段」なるものが載っており、余りの高価さに魂消た記憶がある。(興味のある方は、数ある怪しげなHPをご覧下さい)

 話は燕達に戻る。よく分からないのは、FFの世界ではせいぜいペーパーCLGサイズの彼らが、なぜあのような素晴らしい飛行が出来るのか?という事だ。勿論彼らは、超軽量、飛ぶ為にプログラムされた脳コンピュータ、マルチ可変翼(平面・断面・迎角・上下反角全て)、自在に動く超低抵抗な尾翼等々、FF屋にとって涎が出そうな機能を備えている。
 とは言え、東先生の御著書等によれば、彼らの性能はもう少し悲観的な筈なのだが…。
 正直言うと、難しい事は全然分からない(教育が無いと言うのは情けないコトです)。まあ、生きている蜻蛉の風洞実験をされた先生のことだ、何時かそんな疑問に答えるべく「東大の風洞を(生きた)燕が飛ぶ日」を実現して下さるかもしれない。(当然、動物保護団体からの大目玉は覚悟しておくべきだろう)

 ところで(以下は,言うまでも無く冗談なのだが)、ハイ・ロー両テクニックが究極の域に達しているらしい現在、(自分で考える能力はともかくとして)燕クン並みの性能を持った超高性能CLGの開発は出来ないものだろうか?

例えば、……『○×式燕型CLG。保証性能80〜95秒以上。開発費○○億円、第一期分生産分世界で100機のみ限定発売、販売価格(税別)\10,250,000(カタパルト用TANUゴム3年分、セッテイング用ノートパソコン&小型プリンター、データ収集・処理用機材、マニュアルCD−ROM,索用アンテナセット、その他一式付)、インターネットでのみ予約受付中!!』なぁんて広告が「ラジコン技術」の片隅に載っていたら、…貴方どうします?【「ラジコン技術」に載った、FFフライアー金河氏のテスト記事より…】

 『勿論、例のロボット犬同様、新品の状態ではからきし意気地が無い。つまり飛ばない。だが、様々な条件で学習させることにより、ユーザー好みのパターンで上昇・滑空するようになる。発航は、専用のグリップと熟成済みのゴムにより、5度刻みの角度、60〜100%のパワーが自由に選べる。

 セッティングは、専用のノートパソコンと機体をコードで結び、ユーザーが予め設定した暗号による入力で、無限の可能性を追求出来る。当然、飛行場や気候条件等を入力する必要があるが、その為の風向/風力計・瞬間温度/気圧計がセットには含まれている。機体には、2系統の慣性航法装置が組み込まれ、発航地点から極力離れないように滑空コースを設定するし、前方の障害物を感知し避ける機能も備わっているので、激突による破損や樹木に引っかかると言った不様な失敗は完全に回避される。
消費税512,500円を伴う買い物だが、これを「高価い」と感じるかどうかは、アナタの経済力
FFに賭ける情熱の問題だろう!
オプションでGPSを利用した位置確認発信装置も取付け可能だが、この場合は発注時に490,000円(税別)が必要だ。
なお、最新の情報によれば、「最初のロット分を入手した後、一家離散の憂き目を見たFF屋が続出した…」との噂が世界各地から寄せられたことを憂慮したメーカーが、6ヵ月後を目途に約半分程の価格で廉価モデルを発売するとのことだ。

 喜ばしいニュースではあるが、しかし貧乏なアナタは半年の間燕達の乱舞を、ただ指をくわえて眺めていなくてはならないのだ!(さァ、今すぐ奥様に内緒で定期預金を解約しに行こう!!)』

 どうです?思わず通帳の残高が脳裏をかすめなかっただろうか?

「そんなモノは、FFでは無い!」という声も聞こえてきそうだが、”○×式燕型”は”トマホーク”同様、立派なFF機だ(現に最近の国際級など、無学な者には理解不能なほどハイテク化が進行しているではないか)。発航後の機体と競技者の間に、物理的関係は全く無いのだから。ともあれ、○×式燕型には、当然のように海賊版(中国製”雲雀型”,北朝鮮製”雀型”等々)が登場する筈だ。中には、近くを飛ぶライバル機に妨害電波を発して搭載コンピュータを狂わせてしまうといった、タチの悪いメカニズムを搭載したモノも現れるかもしれない。

 それよりも、もっと心配な事がある。”燕型”の普及によって(FF界に俄か独身者が増える心配はともかく)、飛行場の景色が一変するのだ。月例会の朝,選手たちはパソコンの画面に覆い被さるように座り込み、黙々とセッティングに没頭するのが常識になる。カタパルトに内蔵されたタイマーによって、計時は完全自己申告制になり、発航地点も勝手だ。原っぱでは、小さな模型飛行機とパソコンその他大仰な機材を担いだオジさん達が、ウロウロとさまよう光景が日常化するだろう。何気ない会話も、極秘データ漏洩の可能性があるから、誰もが必要最小限の言葉しか口にしなくなる。

天候の話だって、セッティングのヒントになりかねないのだ!(かくして、”楽しいCLGの世界”は崩壊の危機に瀕する) さて数ヵ月後、「ラジコン技術」にこんな広告が掲載される…『×○式信天翁型HLG新発売!! 第一次ロット予約受付中。価格\11,480,000(全システムを含む、税別)。燕型CLGで証明された高性能が、遂にHLGで実現!保証性能95秒以上、附属の”強肩養成ギブス”が貴方をHLGフィールドのスーパースターへと…』           (SutupidcCat)