◎返事対象記事⇒  動力ゴムのエネルギー特性(松本@GPF)


 
◎ 名前:大村和敏
◎ 作成日:2013.7.19(金) 15:46

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気温と滞空性能

松本さんの論文によって、大気温がゴム動力模型飛行機の滞空性能に、次の2点で大きく影響することが明らかにされました。

1、動力ゴムの出力は、温度j上昇に対して概ね1%/度の割合で向上する。
2、大気温が上がると空気は軽くなり、揚力を補うため滑空速度は速くなり、沈下速度も増大する。

一般的には2点とも深く考慮されていなかったのですが、効果の量を計算してみるとかなり大きく、見逃せない要因だと思います。
日本の気候で考えると、夏・冬で20度くらい温度差があります。この場合、1、の効果は20%のエネルギー向上になり、20%余分に高度を取り、20%余分に滞空するはずです。

2、の効果の算定は多少複雑です。
普通、模型飛行機の滑空速度を計算するときは、次の簡略式を使います。

滑空速度(m/秒)=1.26×(機体重量(g)/(翼面積(平方dm)×揚力係数))^0.5
    平城京級ライトプレーンを例にとれば
滑空速度(m/秒)=1.26×(機体重量(23g)/(翼面積(4平方dm)×揚力係数0.7))^0.5.
        =1.26×(8.2)^0.5=3.6m/秒
    これを揚抗比(CL/CD、6と想定)で割れば、沈下速度=3.6 /6=0.6m/秒

正式の、実機ベースの式は次の形です。
滑空速度=((2/ρ)×機体重量(kg)/(翼面積(平方m)×揚力係数))^0.5.
    「ρ(ギリシャ文字’ロー’)」は、空気密度を示し、地表の標準状態の値は1/8です。
    この式で上記のライトプレーンを計算すると
滑空速度=((2/ρ)×機体重量(0.023kg)/(翼面積(0.04平方m)×揚力係数0.7))^0.5.
      =(16×0.023kg/(0.04平方m×0.7))^0.5
      =4×(0.023kg/(0.04平方m×0.7))^0.5=3.6m/秒
模型用の計算式の係数が1.26で、実機用の式の係数が4になる理由は、模型用単位g、平方dmにしたため、翼面荷重数値が1000g/100平方dmの10倍になったためで、それを補正すると
      4/(10)^0.5=4/3,16≒1.26
4=(2/ρ)0.5ですから、
     1.26=(2/ρ)^0.5/10^0.5=(2/10ρ)^0.5
したがって、ρを変数として表に出し、空気の密度の変化に対応できる、模型飛行機用の滑空速度計算式は、次のようになります。

滑空速度(m/秒)
    =((2/10ρ)^0.5)×(機体重量(g)/(翼面積(平方dm)×揚力係数))^0.5


空気は絶対温度に比例して体積を増減します。だから、冬の10度Cのときの密度に比べて、夏の30度Cのときの密度は、
    (273+10)/(273+30)=283/303=0.934・・・・6.6%減
滑空速度の計算式にρは(1/ρ)^0.5の形で含まれていますから、速度は3.5%くらい増えます。したがって、沈下速度も3.5%大きくなり、滑空滞空時間もそれくらい減ります。

上昇性能も低下します。低下率はパターンによって複雑ですが、滑空の倍くらい効くことが多いので、上昇と滑空を総合した性能低下率は10%くらいと推定します。したがって気温の上昇1度当たり滞空時間が0.5%程度低下します。


動力ゴムのエネルギー変化だけを考えると、高温になる夏季の競技会の記録は明らかに冬季よりも高いはずですが、上記で推定した空気密度ρの変化によって半分くらいは相殺されます。田んぼが主戦場ではなかった昔は、習志野演習場や浜松飛行場を使った真夏・酷暑下の競技会が多く、筆者も体験していますが、冬と有意差が出るほど飛んだ記憶はありません。

少なくとも筆者自身としては、模型飛行機の滞空性能に対する気温の影響に対して無関心であり 、10%を上回るアヤを見落としていたわけです。たまたま、ゴムのエネルギー変化と、空気密度の変化の影響が相殺関係でしたので、見えにくかったのですが、それぞれの影響が10%オーダーとなると、個別に認識・管理すべきレベルだと考えます。
サーマルを検出するために気温の測定が行われていますが、考えてみれば空気が上向きに動いてナンボなのであり、静止状態で温度が上がっただけでは軽くて手ごたえのない、滞空性能を低下させる気団に過ぎません。いままで模型飛行機の滑空速度の計算式で定数にされ、見過ごされていた空気密度ρの変化は、意外に大きな影響力を持っています。
極論かもしれませんが、夏冬のライトプレーンは最適設計が異なり、「衣替え」が望ましいのでは?  



◆2013-7-1920:13:22 田んぼのパンダ − 最近でもっとも有意義なコメントです。  
◆2013-7-2016:55:46 たかだ@KFC − 酷暑の浜松飛行場での新人戦で大村さんに勝った!記憶があります。めちゃめちゃな上昇気流はなく苦戦。  
◆2013-7-2016:58:54 たかだ@KFC − 1957年のこと。ゴムを巻いて列に並んで発進。80gゴムで60条はあったかな。初めてのMAXに感激でドツボに。  
◆2013-7-2017:0:50 たかだ@KFC − 真夏の今頃、朝早くは意外に浮くがお昼にはだらだらした飛びになる感覚がある。はたしてこれかな?  
◆2013-7-2017:2:53 たかだ@KFC − 早朝はよい記録が並ぶのに決勝で揃ってこけるのはこの辺ではないか?探究する値打ちはあるようです。  
◆2013-7-2020:16:27 大村和敏 − ピレリになると、初期の切断事故のトラウマで、1、の効果が出るまで巻きこめなかったのでは?反省!  
◆2013-7-210:31:41 大村和敏 − 空気密度ρは、室内機には明確に効くはず。関係諸兄のご意見をいただければ幸いです。  
◆2013-7-218:48:4 たかだ@KFC − 「巨大翼竜は飛べたか?」という新書で提起しているのは、このあたりか?飛べるはずがないスペックなのだ。

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